サブリース規制——「家賃保証」の広告、勧誘者の範囲、マスターリース契約前の重要事項説明で管理業法が求めること

不動産事業者向け

賃貸住宅管理業法は、オーナーから賃貸住宅を借り上げて第三者に転貸する事業(特定転貸事業、いわゆるサブリース)について、登録の有無を問わず、すべての特定転貸事業者と勧誘者に三つの規制をかけています。①「家賃保証」などの誇大広告の禁止(28条)、②不当な勧誘の禁止(29条)、③マスターリース契約締結前の重要事項説明(30条)です。

規制の対象は、サブリース業者本人だけではありません。サブリース業者から勧誘を委託された建築会社、不動産仲介会社、そして紹介を頼まれたオーナーも「勧誘者」として28条・29条の規制を受けます。「サブリース付きで建てましょう」と提案する建築会社の営業、「一括借上げの会社を紹介します」と言う仲介会社の担当者は、自社がサブリース業者でなくても、この法律の名宛人です。

この記事では、三つの規制の内容、国土交通省のガイドラインが示す表示と勧誘の留意事項、借地借家法32条による家賃減額請求との関係、そして勧誘者としてのリスクを整理します。

この記事の内容

1. 特定転貸事業者と勧誘者——2条4項・5項、28条

法2条4項は、賃貸住宅の賃貸借契約であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるものを「特定賃貸借契約」(マスターリース契約)と定義し、5項は、特定賃貸借契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営む者を「特定転貸事業者」と定義しています。賃借人がオーナーと密接な関係を有する者(同族会社等)である契約は除かれます。

28条は、特定転貸事業者と、特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる「勧誘者」を併せて「特定転貸事業者等」とし、規制の名宛人にしています。国土交通省の「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(2020年10月策定、2023年3月31日改正)は、勧誘者の範囲について、建設業者や不動産業者が建設や不動産販売の際に契約の勧誘を行う場合、サブリース業者から勧誘の依頼を受けたオーナーが他のオーナーに勧誘する場合などを含むと整理しています。委託契約の形式を問わず、サブリース業者との関係で勧誘を行っていれば勧誘者です。

2. 誇大広告等の禁止——28条

特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)(以下「特定転貸事業者等」という。)は、第二条第五項に規定する事業に係る特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

賃貸住宅管理業法第28条

規制対象の事項は、①サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額・支払期日・支払方法等とその変更に関する事項、②維持保全の実施方法、③維持保全の費用分担、④契約の解除に関する事項です。ガイドラインは、①について次の留意事項を示しています。

広告において「家賃保証」「空室保証」など、空室の状況にかかわらず一定期間、一定の家賃を支払うことを約束する旨等の表示を行う場合は、「家賃保証」等の文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合にはその旨及び借地借家法第32条の規定により減額されることがあることを表示すること。表示に当たっては、文字の大きさのバランス、色、背景等から、オーナー等が一体として認識できるよう表示されているかに留意する。

国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(令和5年3月31日改正)10頁

「30年一括借上げ」「家賃保証」と大きく書き、家賃の見直しと減額の可能性を小さな注記に押し込む表示は、この留意事項に反します。ガイドラインはまた、利回りを保証するわけではないのに「利回り○%」とのみ記載して保証されると誤解させる表示、実施しない維持保全の内容を表示すること、オーナーの費用負担を実際より著しく低額と誤解させる表示を挙げています。

3. 借地借家法32条——「家賃保証」が保証にならない理由

マスターリース契約は建物の賃貸借契約であり、借地借家法が適用されます。同法32条1項は、賃料が租税等の負担の増減、土地建物の価格の変動、近傍同種の賃料との比較で不相当になったとき、契約の条件にかかわらず、当事者が賃料の増減を請求できると定めています。サブリース業者は賃借人として、オーナーに対し、この減額請求権を持ちます。「家賃保証」と書いてあっても、サブリース業者は32条により家賃の減額を請求でき、判例上、サブリース契約にも32条の適用があると解されています。

つまり、「30年間家賃を保証する」という約束は、法律上、そのままの意味では成立しません。だからこそ28条とガイドラインは、家賃保証の表示に隣接して減額の可能性を明示することを求めているのです。一方、契約期間中は減額しないという不減額特約を置いても、32条ただし書が効力を認めるのは不増額特約だけであり、不減額特約でサブリース業者の減額請求権を排除することはできないと解されています。

オーナーにとって現実的な防御は、契約前に家賃の見直し条項(見直しの時期、基準、協議方法)を確認し、減額請求があったときの手順(協議、調停前置、暫定家賃)を理解しておくことです。勧誘する側は、この構造を説明せずに契約させれば、次に述べる不当勧誘の問題になります。

4. 不当な勧誘等の禁止——29条

29条は、特定転貸事業者等に対し、①契約の締結の勧誘をするに際し、または契約の解除を妨げるため、相手方の判断に影響を及ぼす重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為、②そのほか相手方の保護に欠ける行為として省令で定める行為(威迫、迷惑な時間帯の電話・訪問、契約しない旨を示した者への執拗な勧誘など)を禁止しています。

ガイドラインが不当勧誘の典型として挙げるのは、家賃減額のリスク、契約期間中の解約の条件、維持保全費用のオーナー負担、原状回復費用の負担といった不利益事実を告げないこと、および「絶対に家賃は下がらない」「解約はいつでもできる」といった不実の告知です。建築会社の営業担当者が、建物の受注を目的に、サブリースの不利益事実を説明せずに「一括借上げで安心です」と勧めれば、勧誘者として29条違反になります。

5. 特定賃貸借契約の重要事項説明——30条

特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結しようとするときは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者(特定転貸事業者である者その他の特定賃貸借契約に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものを除く。)に対し、当該特定賃貸借契約を締結するまでに、特定賃貸借契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。

賃貸住宅管理業法第30条第1項

説明義務を負うのは特定転貸事業者本人です(勧誘者は説明義務者ではありません)。省令で定める説明事項には、サブリース業者が支払う家賃の額・支払期日・支払方法、家賃の設定根拠、家賃改定の時期と条件、借地借家法32条により減額されることがある旨、契約期間、契約の更新と解除の条件、維持保全の実施方法と費用分担、転貸の条件、契約終了時の転借人への対応などが含まれます。オーナーの承諾があれば電磁的方法での提供も可能です。契約締結時には、31条により契約内容を記載した書面の交付も必要です。

ガイドラインは、説明にあたって、オーナーの知識・経験・財産状況に応じた説明を行うこと、説明から契約締結まで1週間程度の期間を置くことが望ましいこと、書面の重要部分を強調することなどを示しています。「説明した」という形式だけでなく、オーナーが減額リスクと解除条件を理解して契約したことを記録に残す運用が、後日の紛争で業者を守ります。

6. 違反した場合

28条〜30条に違反した特定転貸事業者等に対しては、国土交通大臣が指示(33条)、業務停止命令(34条)を行うことができ、処分は公表されます。誇大広告等の禁止違反、不当勧誘の禁止違反、業務停止命令違反には罰則があります。登録制度の対象ではない事業者や勧誘者も、この監督と罰則の対象です。国土交通省は違反事例に関する情報を受け付ける窓口を設けており、オーナーからの申告が処分の端緒になります。

行政処分と別に、民事上は、不利益事実の不告知や不実告知による契約について、オーナーから錯誤・詐欺による取消しや、説明義務違反による損害賠償を主張されることになります。勧誘者である建築会社が、サブリース契約を前提に建物を受注していた場合、建築請負契約の効力や損害賠償の範囲にも波及します。

7. 実務チェックリスト

  • 自社が特定転貸事業者か、勧誘者か、いずれにも当たらないかを事業ごとに整理した
  • 広告・パンフレット・ウェブサイトの「家賃保証」「一括借上げ」「利回り○%」の表示に隣接して、家賃見直しと借地借家法32条による減額の可能性を一体として認識できる形で表示している
  • 維持保全の内容・費用分担・解除条件について、実際と異なる、または著しく有利と誤認させる表示がない
  • 勧誘時に、家賃減額リスク、解約条件、維持保全・原状回復の費用負担を説明する手順と記録がある
  • 契約しない旨を示したオーナーへの再勧誘、迷惑な時間帯の連絡を禁止する社内ルールがある
  • 特定転貸事業者として、契約締結前の重要事項説明書と締結時書面の様式が省令の事項を網羅している
  • 説明から契約締結までの期間、説明の記録(日時、説明者、オーナーの理解確認)を残している
  • 建築会社・仲介会社と提携している場合、その担当者が勧誘者として規制を受けることを共有している

よくある質問

Q. 当社はサブリース業者ではなく建築会社です。規制は関係ありますか。

A. サブリース業者から勧誘を依頼されて、建物の受注に際してオーナーにマスターリース契約を勧めていれば「勧誘者」に当たり、誇大広告の禁止(28条)と不当勧誘の禁止(29条)の規制を受けます。委託契約書の有無は問われません。

Q. 「家賃保証」という言葉は使えないのですか。

A. 使えますが、隣接する箇所に、家賃の見直しがある場合はその旨と、借地借家法32条により減額されることがあることを、一体として認識できる形で表示する必要があります。小さな注記で済ませる表示はガイドラインの留意事項に反します。

Q. 契約書に「家賃は減額しない」と書けば、減額請求を防げますか。

A. 防げません。借地借家法32条ただし書が効力を認めるのは不増額特約だけで、不減額特約で賃借人(サブリース業者)の減額請求権を排除することはできないと解されています。

Q. 管理業の登録をしていない小規模なサブリース業者にも規制は及びますか。

A. 及びます。28条〜30条の規制は登録の有無や管理戸数を問わず、すべての特定転貸事業者と勧誘者に適用されます。

Q. 重要事項説明は勧誘した建築会社が行ってもよいですか。

A. 30条の説明義務は特定転貸事業者本人が負います。勧誘者が代わりに説明しても、特定転貸事業者の義務の履行にはなりません。特定転貸事業者が書面を交付して説明し、記録を残してください。

参考資料(一次資料)

ご相談について

当事務所では、サブリース事業の広告・勧誘資料の法令適合性の点検、特定賃貸借契約の重要事項説明書・契約書の様式整備、勧誘者となる提携先との役割分担の整理、オーナーからの減額請求・解約・損害賠償請求への対応をお受けしています。広告を出す前、提携を始める前にご相談いただければ、処分と紛争の両方を避ける形をお示しします。

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