賃貸住宅管理業法——200戸の登録義務、業務管理者、管理受託契約の重要事項説明、分別管理、定期報告を点検する

不動産事業者向け

賃貸住宅の維持保全と家賃等の金銭管理をオーナーから受託して行う事業は、管理戸数が200戸以上であれば国土交通大臣の登録が必要です(賃貸住宅管理業法3条、施行規則3条)。登録業者には、営業所ごとの業務管理者の選任、管理受託契約締結前の重要事項説明、締結時の書面交付、家賃等の分別管理、委託者への定期報告が義務づけられます。

この法律は2021年6月15日に全面施行され、登録制度は5年ごとの更新制です。施行から5年が経過する2026年は、最初の更新期を迎える管理会社が多い年です。更新に向けて、日常の運用が法の要件を満たしているかを点検する時期でもあります。

この記事では、登録の要否、各義務の条文と中身、そして管理会社が自社の運用を点検する順序を整理します。サブリース(特定転貸事業)の規制は別の記事で扱います。

この記事の内容

1. 何が「賃貸住宅管理業」か——2条の定義

法2条2項は、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、①賃貸住宅の維持保全(点検、清掃その他の維持と、必要な修繕)を行う業務、②家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務(①と併せて行うものに限る)を行う事業を「賃貸住宅管理業」と定義しています。金銭管理だけを受託し維持保全を行わない場合は該当しません。逆に、維持保全を受託していれば、金銭管理をしていなくても該当します。

「賃貸住宅」は賃貸の用に供する住宅で、人の生活の本拠として使用する目的以外に供されているものは除かれます(2条1項)。事務所・店舗のみの管理は対象外で、住居と店舗が混在する建物では住居部分が対象です。

2. 登録義務——200戸以上、5年更新

賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。ただし、その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでない。

賃貸住宅管理業法第3条第1項

省令で定める規模は「賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅の戸数が二百戸」です(施行規則3条)。200戸以上を管理する業者は登録が必要で、200戸未満は登録義務がありませんが、任意に登録することはできます。登録は5年ごとに更新を受けなければ効力を失います(3条2項)。管理戸数は増減するため、200戸に近い規模の会社は、戸数の推移を継続的に把握しておく必要があります。登録せずに200戸以上の管理業を営めば、無登録営業として罰則の対象になります。

3. 業務管理者——営業所ごとに1人以上

賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、一人以上の第四項の規定に適合する者(以下「業務管理者」という。)を選任して、当該営業所又は事務所における業務に関し、管理受託契約(管理業務の委託を受けることを内容とする契約をいう。以下同じ。)の内容の明確性、管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性その他の賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施を確保するため必要な国土交通省令で定める事項についての管理及び監督に関する事務を行わせなければならない。

賃貸住宅管理業法第12条第1項

業務管理者は他の営業所の業務管理者を兼ねることができず(12条3項)、業務管理者がすべて欠けた営業所では、新たに選任するまで管理受託契約を締結できません(同条2項)。業務管理者の要件は、欠格事由に該当せず、一定の実務経験その他の省令で定める要件(講習の修了等)を備えることです(同条4項)。退職や異動で業務管理者が不在になる期間を作らないことが、実務上の要点です。

4. 管理受託契約の重要事項説明と契約時書面——13条・14条

管理受託契約を締結しようとするときは、締結までに、契約の内容と履行に関する省令で定める事項について、書面を交付して委託者(オーナー)に説明しなければなりません(13条1項)。委託者の承諾を得れば電磁的方法による提供も可能です(同条2項)。相手方が賃貸住宅管理業者その他専門的知識・経験を有する者として省令で定める者である場合は説明義務が除かれます。

契約を締結したときは、遅滞なく、管理業務の対象となる賃貸住宅、管理業務の実施方法、契約期間、報酬、更新・解除の定め、その他省令で定める事項を記載した書面を委託者に交付しなければなりません(14条1項)。宅建業法の重要事項説明が借主・買主に向けたものであるのに対し、管理業法の説明はオーナーに向けたものです。オーナーが個人であれ法人であれ、契約前の説明と契約時の書面が必要です。

運用上の注意点は、契約更新時と契約内容変更時です。管理業務の範囲、報酬、修繕の負担区分などを変更する場合、変更後の内容について改めて説明と書面交付が必要になると解されています。国土交通省の「解釈・運用の考え方」に沿って、更新・変更時の手順を社内で定めてください。

5. 分別管理——16条

賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務(第二条第二項第二号に掲げるものに限る。以下この条において同じ。)において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならない。

賃貸住宅管理業法第16条

オーナーから受領を委託された家賃・敷金・共益費は、自社の固有財産と分別し、かつ他のオーナーの分とも分別して管理する義務があります。省令は、管理業務で受領する金銭を管理する口座を固有財産の口座と分け、帳簿や会計ソフト上で契約ごとの金銭の状況を直ちに判別できる状態にすることを求めています。すべての契約ごとに口座を分ける必要はありませんが、帳簿上で契約ごとの残高が追えることが要件です。家賃の一時的な立替えや、オーナーへの送金前の資金を自社の運転資金に流用することは、分別管理義務違反であるだけでなく、業務上横領の問題にもなります。

6. 定期報告——20条

管理業者は、管理業務の実施状況その他省令で定める事項について、省令で定めるところにより、定期的に委託者に報告しなければなりません(20条)。省令は、報告の対象期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況などを内容とし、契約期間中は1年を超えない期間ごとに、また契約終了時にも報告することを求めています。委託者の承諾を得れば電磁的方法での報告も可能です。

定期報告は、オーナーとの信頼関係の道具であると同時に、後日の紛争で管理会社の業務遂行を証明する資料になります。「修繕の必要性を報告していたのにオーナーが承認しなかった」「入居者の苦情を報告していた」という記録は、入居者や第三者から管理会社が責任を問われたときの反証になります。報告書の様式を法の要求事項に合わせて整え、送付記録を残してください。

7. そのほかの義務と、監督・罰則

  • 帳簿の備付け・保存(18条)——管理受託契約ごとに帳簿を備え、省令で定める期間保存する
  • 標識の掲示(19条)——営業所・事務所ごとに公衆の見やすい場所に標識を掲示する
  • 従業者証明書の携帯(17条)——業務に従事する者に証明書を携帯させ、関係者の請求があれば提示する
  • 再委託の禁止(15条)——管理業務の全部を他の者に再委託してはならない。一部の再委託は可能
  • 名義貸しの禁止(11条)、秘密保持義務(21条)

国土交通大臣は、登録業者に対して業務改善命令、業務停止命令、登録の取消しを行うことができ、処分は公表されます。無登録営業、名義貸し、業務停止命令違反には刑事罰があります。監督処分の実例は国土交通省が公表しており、分別管理や重要事項説明の不備を理由とするものが含まれています。

8. 登録更新期に向けた点検チェックリスト

  • 管理戸数の推移を把握し、200戸以上であれば登録を受けている(更新期限を管理している)
  • 営業所・事務所ごとに業務管理者を選任し、不在期間が生じない体制がある
  • 管理受託契約の締結前に重要事項説明書を交付して説明し、記録を残している
  • 契約締結時書面を遅滞なく交付している
  • 契約更新・内容変更時に説明と書面交付の要否を判断する手順がある
  • 受領した家賃等を固有財産と分別し、帳簿で契約ごとの残高を直ちに判別できる
  • 委託者への定期報告を1年を超えない期間ごとに行い、送付記録を残している
  • 帳簿の備付け・保存、標識の掲示、従業者証明書の携帯ができている

よくある質問

Q. 管理戸数が180戸です。登録は不要ですか。

A. 200戸未満であれば登録義務はありません。ただし、任意に登録することは可能で、登録すれば法の義務も適用されます。戸数が200戸に達した時点で登録が必要になるため、推移を把握しておいてください。

Q. オーナーが法人の場合も重要事項説明は必要ですか。

A. 必要です。説明義務が除かれるのは、相手方が賃貸住宅管理業者その他専門的知識・経験を有する者として省令で定める者である場合に限られ、法人であること自体は除外理由になりません。

Q. 家賃を受け取る口座は、オーナーごとに分けなければなりませんか。

A. 契約ごとに口座を分けることまでは求められていません。固有財産の口座と管理業務の口座を分け、帳簿や会計ソフト上で契約ごとの金銭の状況を直ちに判別できる状態にすることが要件です。

Q. 定期報告はどのくらいの頻度で必要ですか。

A. 省令により、契約期間中は1年を超えない期間ごとに、また契約終了時に報告することが求められています。オーナーの承諾があれば電磁的方法での報告も可能です。

Q. 業務管理者が退職しました。管理業務を続けられますか。

A. 既存の管理業務の遂行は可能ですが、その営業所では新たに業務管理者を選任するまで管理受託契約を締結できません。速やかに要件を満たす者を選任してください。

参考資料(一次資料)

ご相談について

当事務所では、賃貸住宅管理業法の義務に沿った管理受託契約書・重要事項説明書・定期報告書の様式整備、分別管理の運用点検、登録更新前の法令適合性の確認をお受けしています。現行の書式と運用フローをお持ちいただければ、不備のある箇所を具体的にお示しします。

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