重要事項説明はここが変わった——水害ハザードマップ(2020年)、電子書面とIT重説(2022年)、建物状況調査、そして47条の不告知

不動産事業者向け

重要事項説明(宅建業法35条)は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が、法定の事項を記載した書面を交付して説明する手続です。近年、説明事項と方法の両方に改正が重なりました。2020年8月28日から水害ハザードマップにおける物件の所在地が説明事項になり、2022年5月18日から書面の電磁的方法による提供と取引士の押印廃止が施行され、既存建物では建物状況調査の実施の有無と結果の概要が説明事項に入っています。

改正の中身を追うだけでなく、説明漏れがどう責任につながるかを理解しておく必要があります。35条の事項を故意に告げない行為は47条1号で禁止され、指示処分・業務停止処分の対象になり、民事上は説明義務違反として損害賠償の根拠になります。

この記事では、最近の改正点を施行日とともに整理し、電子化の要件、そして札幌の物件で説明を落としやすい事項を確認します。

この記事の内容

1. 重要事項説明の骨格——35条1項

宅建業法35条1項は、宅建業者に対し、売買・交換・貸借の相手方等に、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、法定事項を記載した書面を交付して説明させることを義務づけています。法定事項は同項各号に列挙され、登記された権利、法令上の制限、私道負担、飲用水・電気・ガス・排水の整備状況、区分所有建物の管理事項、代金以外に授受される金銭、契約の解除、損害賠償額の予定・違約金、手付金等の保全措置、支払金・預り金の保全、ローンあっせん、契約不適合責任の履行措置、そして省令で定める事項などです。

取引士は説明の際に取引士証を提示し(同条4項)、書面に記名します(同条5項)。相手方が宅建業者の場合は書面の交付で足り、説明は不要です(同条6項)。

2. 水害ハザードマップ——2020年8月28日施行

宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令(令和2年内閣府令・国土交通省令第2号)により、2020年8月28日から、水防法に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地が説明事項に加わりました。施行規則16条の4の3第3号の2は、次のように定めています。

水防法施行規則(平成十二年建設省令第四十四号)第十一条第一号の規定により当該宅地又は建物が所在する市町村の長が提供する図面に当該宅地又は建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地又は建物の所在地

宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3第3号の2

説明の方法は、市町村が配布する印刷物または市町村のウェブサイトに掲載されている水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件のおおむねの位置を示すことです。売買・貸借の双方で必要です。札幌市の場合、洪水ハザードマップは河川ごとに作成され、市のウェブサイトで確認できます。物件が浸水想定区域の外にあっても、マップを提示して区域外であることを示す運用が求められます。「区域外だから説明不要」ではありません。

同条は、造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域についても説明事項としています(1号〜3号)。札幌市内でも土砂災害警戒区域に指定された地域があり、該当物件では区域内にある旨の説明が必要です。

3. 書面の電子化と押印廃止——2022年5月18日施行

デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)による宅建業法改正が2022年5月18日に施行され、重要事項説明書、契約締結時書面(37条書面)、媒介契約書面を、相手方の承諾を得て電磁的方法で提供できるようになりました(35条8項・9項ほか)。同時に、取引士の押印は廃止され、記名のみで足りることになりました。

電磁的方法で提供する場合の要件は、①相手方の承諾を得ること、②省令で定める方法(電子メールの送信、ウェブサイトからのダウンロード、記録媒体の交付等)によること、③取引士の記名に代わる措置(電子署名等)を講じることです。承諾は書面またはメール等で取得し、その記録を保管します。国土交通省は電子書面の提供に関するマニュアルを公表しており、事前に相手方のIT環境を確認することや、提供後に受領を確認することを求めています。

IT重説——説明をオンラインで行う要件

テレビ会議等を用いて重要事項説明を行うIT重説は、賃貸取引で2017年10月から本格運用が始まり、売買取引でも2021年3月30日から本格運用されています。IT重説を行うには、双方向でやり取りできる環境、取引士証を相手方が画面上で確認できること、説明開始前に相手方のもとに重要事項説明書等が届いていること(電子書面の場合は事前提供)、相手方の同意などが必要です。相手方が途中で音声・映像の不調を訴えた場合は、説明を中断し、状況が回復してから再開することが求められます。

4. 既存建物の建物状況調査——35条1項6号の2

既存建物の売買・交換・貸借では、建物状況調査(実施後1年以内、鉄筋コンクリート造等の共同住宅等では2年以内)を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要を説明します(35条1項6号の2イ、施行規則16条の2の2)。売買・交換では、設計図書・点検記録その他の建築・維持保全の状況に関する書類の保存の状況も説明事項です(同号ロ)。調査を実施する者は、建築士で国土交通大臣が定める講習を修了した者です(施行規則15条の8)。

「調査を実施していない」という事実も説明事項です。実施していない場合は、その旨を説明します。調査を実施していないことを理由に買主から責任を問われるものではありませんが、媒介契約書には建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載する義務があり(34条の2第1項4号)、あっせんの有無と依頼者の意向を記録しておくことが後日の説明になります。

5. 説明漏れの責任——47条1号と民事責任

宅建業法47条1号は、契約の締結について勧誘をするに際し、35条1項各号に掲げる事項、35条の2各号の事項、37条1項各号の事項、そのほか物件の所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通等の利便・取引条件など相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁止しています。違反は65条の指示処分・業務停止処分の対象で、悪質な場合は罰則もあります。

民事上は、説明義務違反による損害賠償責任です。相手方が説明を受けていれば契約しなかった、あるいは別の条件で契約したと認められる場合、契約で生じた損害の賠償を求められます。35条の法定事項に限らず、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、宅建業者が知っていた、または通常の調査で知り得た事実を説明しなかった場合に問題になります。人の死の告知、境界・越境、近隣トラブル、騒音・臭気の履歴などは、この「重要な影響を及ぼす事項」として争われる典型です。

6. 札幌の物件で説明を落としやすい事項

  • 水害ハザードマップ——物件が区域外でもマップを提示して位置を示す。札幌市は河川ごとにマップが分かれるため、対象河川を確認する
  • 土砂災害警戒区域——市内の指定区域に該当する物件では区域内である旨を説明する
  • 暖房・給湯設備の種類と整備状況——建物の貸借では設備の整備の状況が説明事項(施行規則16条の4の3第7号)。灯油・ガス・電気の別、集中暖房か個別か、灯油タンクの有無と所有関係を明記する
  • 除排雪の負担区分——法定事項ではないが、契約上の負担(共用部の除雪、屋根の雪下ろし、駐車場の排雪)を契約書と併せて説明しておくと、冬季の紛争を減らせる
  • 水抜き・凍結防止の設備——建物の貸借で設備の整備状況として、水抜き栓の位置、凍結防止帯の有無、入居者の水抜き義務を説明・記録する
  • 定期借家契約である旨——借地借家法38条の定期建物賃貸借を行う場合はその旨が説明事項(同条第9号)。別途、貸主による事前説明書面が必要

7. 実務チェックリスト

  • 水害ハザードマップを提示し、物件の位置を示した記録(マップの写しへの位置記入)を保管している
  • 造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域の該当を確認する手順がある
  • 電子書面を提供する場合、相手方の承諾を記録し、省令で定める方法と記名に代わる措置を講じている
  • IT重説では取引士証の提示、事前の書面到達、双方向環境、中断・再開の手順を守っている
  • 既存建物で建物状況調査の実施の有無と結果概要、書類の保存状況を説明している
  • 設備の整備状況(暖房・給湯・水抜き設備)を建物貸借の重説に具体的に記載している
  • 売主・貸主への照会事項(人の死、越境、近隣トラブル、臭気・騒音、雨漏り)の回答を重説に反映している
  • 重要事項説明書の控えと説明記録を保存している

よくある質問

Q. 物件が浸水想定区域の外にあります。ハザードマップの説明は不要ですか。

A. 必要です。市町村が作成する水害ハザードマップを提示し、物件のおおむねの位置を示すことが求められています。区域外であれば、区域外であることをマップ上で示します。

Q. 重要事項説明書をPDFでメール送付し、電話で説明してよいですか。

A. 書面の電磁的提供には相手方の承諾と省令で定める方法、記名に代わる措置が必要です。説明を電話だけで行うことはIT重説の要件(双方向の映像・音声、取引士証の画面確認)を満たさないため、テレビ会議等を用いる必要があります。

Q. 建物状況調査を実施していない中古住宅です。何を説明しますか。

A. 実施していない旨を説明します。あわせて、売買では設計図書・点検記録等の保存の状況を説明します。媒介契約時にあっせんの意向を確認した記録を残しておいてください。

Q. 説明を忘れた事項があり、契約後に気づきました。

A. 直ちに相手方に説明し、経緯を記録してください。故意でなくても、説明漏れが相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項であれば損害賠償の問題になり得ます。契約条件の見直しを含めて、弁護士に相談してください。

Q. IT重説の途中で映像が止まりました。そのまま続けてよいですか。

A. 続けられません。相手方が映像・音声の不調を訴えた場合、または取引士がそれを認識した場合は説明を中断し、状況が回復してから再開することが求められています。

参考資料(一次資料)

ご相談について

当事務所では、重要事項説明書の様式点検、電子書面・IT重説の導入時の要件確認、説明漏れを指摘された場合の対応をお受けしています。現在お使いの重説様式をお持ちいただければ、近年の改正に対応していない箇所と、札幌の物件で追加すべき記載を具体的にお示しします。

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