共同親権になったら、子どもの受診や学校の書類に毎回2人の同意が必要になるのでしょうか。民法は、原則として共同で親権を行う一方で、監護・教育に関する日常の行為や急迫の事情がある場合など、一方で対応できる場面を設けています。大切なのは、何でも共同、何でも単独という理解を避けることです。[1]
2026年4月施行の改正後は、親権者の定めだけでなく、監護者や監護の分担についての定めも確認する必要があります。学校や医療機関へ説明する際には、実際の決定書や合意の内容を踏まえて整理しましょう。
この記事の内容
- 日常の世話と重要な決定を分ける
- 医療の必要性と緊急性を確認する
- 学校との連絡先を明確にする
- 監護者を定めている場合はその内容を見る
- 意見が一致しない事項は具体的に切り出す
- 連絡ルールは子どもの生活に合わせる
- 返答が必要な相談の記録を残す
- よくある質問
日常の世話と重要な決定を分ける
食事、服装、日々の持ち物など、監護・教育に関する日常の行為は、一方の親権者が単独で行えるとされています。子どもが安定した生活を送るための通常の世話について、その都度すべてを協議するわけではありません。[1]
一方、子どもの生活に大きな影響を及ぼす進路や転居などは、同じようには扱えません。行為の名称だけで決めるのではなく、具体的な内容や影響を確認します。例えば「学校のこと」という同じ分類でも、日々の欠席連絡と進学先の決定では意味が異なります。
父母の間で「普段のことは任せる」と話していても、どこまで含むか認識が違うことがあります。必要な事項を挙げ、誰が対応し、どの情報を共有するかを定めておくと、締切間際の対立を減らせます。
医療の必要性と緊急性を確認する
受診の場面でも、通常の診療と重大な医療上の判断を一律に扱うことはできません。症状、治療の内容、子どもへの影響、判断までの時間などを確認します。親権についての一般論だけで医療判断を遅らせないことが大切です。
民法824条の2は、子どもの利益のため急迫の事情がある場合に、一方が単独で親権を行えることを定めています。生命や身体の危険が迫る場面で、相手から返答がないことだけを理由に必要な対応を止めないよう、医療機関に事情を伝えてください。[1]
緊急時にどう対応したかは、落ち着いてから記録します。症状、医療機関の説明、連絡した時刻、相手の返答の有無などを分けて残します。後から連絡できたことを理由に、当時も時間的な余裕があったと決めつけず、その時点の状況を明確にします。
学校との連絡先を明確にする
学校へは、親権者、日常の連絡先、子どもと暮らしている人、緊急時の連絡順を、必要な範囲で伝えます。親権が共同であることと、学校からの電話を常に2人へ同時にかけることは同じではありません。学校の運用も確認して、連絡が途切れない形を考えます。
例えば、進学先の候補について協議が必要なら、説明会、申込期限、本人の希望、費用などを早めに共有します。締切の前日になって初めて提案すると、単なる時間不足と意見の対立が混ざってしまいます。いつ何を決める必要があるかを表にすると整理しやすくなります。
子どもが相手の親へ説明して同意を取る役割を負わされないようにしてください。父母間の連絡の問題は大人が整理し、子どもの意見を聞くことと、交渉を任せることを区別します。
監護者を定めている場合はその内容を見る
共同親権であっても、子の監護をすべき者が定められている場合など、民法824条の3に基づく規律があります。親権者が2人という情報だけで、すべての決定権限を判断することはできません。調停調書や審判書などで何が定められているか確認します。[1]
監護に関する定めがあるからといって、子どもの財産管理などあらゆる事項を同じように扱えるとは限りません。監護・教育の問題と財産上の法律行為を分け、具体的な行為が権限の範囲に含まれるかを検討します。
学校や医療機関から説明を求められた場合は、関係のない夫婦間の争いまで広げず、必要な書面と事実を示します。判断に迷う機関に対し、片方の親の理解だけを絶対のものとして押し付けず、確認すべき点を明確にしましょう。
意見が一致しない事項は具体的に切り出す
共同して行うべき親権の特定の事項について協議が調わない場合、家庭裁判所が一方の親権者による単独の行使を定める手続が設けられています。親権全体を変更する問題と、特定の進学先などを決める問題は区別して検討します。[1]
相談では「相手が何でも反対する」という説明だけでなく、対象となる判断、選択肢、子どもへの影響、期限、これまでの協議経過を示します。相手の返答がない場合には、連絡の日時と方法も記録します。単に連絡を送ったことと、必要な情報が伝わったことは同じではありません。
例えば、転居に関する問題なら、転居の理由、通学先、移動距離、交流への影響、子どもの生活環境などを整理します。急迫の事情があるかの評価を含め、既成事実を作るために一方的に進めるのではなく、早期に適切な対応を相談します。
連絡ルールは子どもの生活に合わせる
日常の報告、重要な協議、緊急連絡を同じ連絡手段と頻度にすると、負担が増えることがあります。定期的に共有する内容と、その都度連絡する内容を分け、必要な情報が埋もれないようにします。返答の目安も、行為の緊急性に応じて考えます。
ただし、暴力や威圧がある家庭で直接連絡を強いるべきではありません。代理人や支援機関を介する方法、安全に配慮した情報共有を検討します。共同親権という言葉を理由に、住所や居場所を無制限に知らせなければならないと考えないでください。
現在の取決めが生活に合っているかは、進学や健康状態の変化に応じて見直します。何度も同じ事項で止まる場合には、連絡の工夫だけで解決できるか、監護に関する定めや裁判所の手続が必要かを検討します。子どもの日常が滞らないことを中心に考えましょう。
返答が必要な相談の記録を残す
重要な事項を相談するときは、判断したい内容、選択肢、必要な情報、期限を整理して伝えます。短いメッセージで「どうするの」とだけ送ると、相手が何に答えるべきか分からず、返答がないことをめぐる争いにつながります。資料を送った日と相手の返答も残してください。
例えば、治療方針について相談するなら、医療機関から説明された選択肢、急ぐ理由、費用や通院の予定を区別します。親自身の推測を医師の説明として伝えないことが大切です。緊急性がある場合には、子どもの安全のために必要な対応を優先し、事後に経緯を説明できるよう記録します。
共同で判断すべき事項について対立が続くときは、同じ主張を何度も送り合うだけでは期限に間に合わないことがあります。家庭裁判所の手続が必要かを早めに相談してください。日常の行為かどうか迷う場合も、行為の名前だけでなく、子どもへの影響やその場の事情を具体的に伝えることが重要です。[1]
よくある質問
Q. 毎日の食事にも相手の同意が必要ですか
A. 監護・教育に関する日常の行為は単独で行えます。すべての生活行為について逐一同意を取る制度ではありません。
Q. 急病でも相手の返事を待つ必要がありますか
A. 子どもの利益のため急迫の事情がある場合には単独で対応できる規定があります。医療機関へ事情を伝え、必要な救護を遅らせないでください。
Q. 学校への連絡先は必ず2人ですか
A. 親権者の定めと実務上の連絡先は区別します。学校の手続と子どもの安全に合わせて確認します。
Q. 一つの進路問題だけ裁判所へ相談できますか
A. 特定事項について単独で親権を行う者を定める手続を検討できます。期限と協議の経過を整理してください。
Q. 監護者なら子どもの預金も自由に処分できますか
A. 監護・教育の権限と財産管理の問題は同じではありません。具体的な権限と子どもの利益を確認する必要があります。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

