約束した養育費が振り込まれない場合、まず確認するのは、どの書面で何を取り決めたかと、何月分がいくら未払かです。相手へ何度も連絡する前にこの2点を整理すると、利用できる手続と必要な資料が見えてきます。
2026年4月から養育費の履行確保に関する制度が変わっています。公正証書がないから何もできない、法改正があったから必ず全額すぐ回収できる、といった両極端の理解は避けましょう。権利の根拠、請求する期間、相手の財産に応じて検討します。[1][2]
この記事の内容
- 合意の形を確認する
- 未払表は月ごとに作る
- 催促は内容と到達が分かる方法で行う
- 履行勧告と強制執行は異なる
- 改正後の先取特権と情報取得を確認する
- 回収の見通しと生活の支援を並行して考える
- 請求前に作る未払一覧
- よくある質問
合意の形を確認する
調停調書、審判書、強制執行認諾文言のある公正証書、父母間の合意書、メッセージだけの取決めなど、手元の資料を集めます。タイトルが「離婚協議書」であることだけでは、直ちにどの執行手続が使えるかは分かりません。
書面では、支払う人、受け取る人、対象の子ども、金額、支払日、始期と終期を確認します。「毎月相当額を払う」など金額が確定していない表現や、複数の費目をまとめた記載は、請求内容を明らかにする必要があります。
原本の所在も確認します。写真しかない場合には、作成した公証役場や裁判所で必要な書類を取得する手続を検討します。後から作った説明メモと、実際の合意書を混同しないように分けて保管してください。
未払表は月ごとに作る
対象月、約束した金額、支払期限、実際の入金日と金額、差額を表にします。数か月分がまとめて振り込まれた場合は、どの月に充当されたかを確認します。少額の入金があるときほど、残額を正確に把握することが大切です。
例えば、毎月5万円の取決めに対し、3か月の間に5万円、2万円、0円の入金であれば、対象の期間と充当関係を確認したうえで不足額を整理します。学用品代として別に受け取った金銭があれば、その合意内容も確認します。単純に入金をすべて無視したり、逆にすべて養育費として差し引いたりしません。
預金通帳や取引明細は、入金がないことを確認できる期間を含めて保存します。現金で受け取った分や相手が直接支払った費用がある場合も記録し、争いがある項目には印を付けます。
催促は内容と到達が分かる方法で行う
連絡では、何月分のいくらが未払か、どの取決めに基づくか、いつまでの支払を求めるかを明確にします。離婚に至る非難を長く書くより、請求内容が分かる方が記録としても使いやすくなります。
相手が返答しない場合や、約束を繰り返し破る場合には、催促だけを続けるのではなく次の手段を検討します。勤務先や親族へ私生活上の情報を広げて圧力をかける方法は、新たな問題を生みます。DV等がある場合は直接連絡を避け、代理人等を通じる方法を考えます。
相手から減額の希望が出た場合は、その理由と資料を確認します。希望を伝えたことだけで元の取決めが当然に変更されるものではありません。未払分の清算と、将来の金額の変更を分けて検討します。
履行勧告と強制執行は異なる
家庭裁判所の調停や審判などで定めた義務については、履行勧告を利用できる場合があります。ただし、勧告そのものが勤務先や銀行からお金を取り立てる手続ではありません。相手の対応と状況によって、強制執行等を検討します。[2]
債務名義に基づく債権執行では、給与や預金など対象となる財産を確認します。必要書類や管轄、差押えの範囲は手続に応じて異なります。裁判所の決定があっても、対象財産がなければ回収につながらないことがあります。
養育費等には将来の定期的な支払に関する特則もありますが、どの債権にどこまで使えるかの確認が必要です。解決金や慰謝料と同じ扱いでよいとは限りません。合意書の費目を区別することが、ここでも重要になります。
改正後の先取特権と情報取得を確認する
2026年改正で、一定の養育費等に先取特権が認められ、要件を満たす書面による取決め等に基づいて担保権実行を検討できるようになりました。形成養育費等の優先権には、原則として子1人当たり月額8万円という範囲が設けられています。これは養育費の標準額を8万円にする制度ではありません。[1][2]
法定養育費の月額2万円と、この優先権の範囲も別の数字です。また、改正前の取決めや未払については、対象となる支払の発生時期などを確認する必要があります。過去の未払をすべて新制度で扱えると決めつけないようにします。
相手の勤務先が分からない場合には、財産開示や第三者からの情報取得、養育費等のワンストップ執行手続を検討することがあります。いずれも利用要件と必要資料があります。氏名や住所を知っていればすべての口座を無条件で調べられるというものではありません。[3]
回収の見通しと生活の支援を並行して考える
手続には時間がかかるため、今月の生活費をどう確保するかも重要です。回収の方針を立てながら、利用できる公的支援や支出の見直しを確認します。養育費を請求することと、生活支援を相談することは両立します。
時効や書面の効力、相手の所在が問題になる場合は、未払が長期化する前に相談してください。連絡を続けているだけで、すべての権利がいつまでも保たれるとは限りません。各月の請求と、それまでに取った対応を確認します。
札幌・手稲で養育費の未払に困っている方は、合意書等と入金履歴を持参してください。未払額を計算し、勧告、交渉、差押え、情報取得などの選択肢から、現在の状況に合う方法を検討します。
請求前に作る未払一覧
未払額の一覧は、対象月、約定額、支払期限、入金日、入金額、残額の順で作ります。現金で受け取った分や、相手が学費等を直接払った分がある場合は、その扱いに合意があるかも確認してください。入金が養育費なのか、ほかの返済なのか不明なら、送金時の連絡を照らし合わせます。
例えば、ある月に半額だけ入金され、その翌月にまとめて振り込まれた場合には、どの月へ充当したかによって見かけ上の未払月が変わります。自分の計算方法を説明できる形にし、元の通帳等も保存します。遅延損害金を請求する場合には、元本とは別欄にして根拠と計算期間を確認します。
相手から支払猶予の相談があったときは、対象額、新しい支払日、今後の通常の養育費をどうするかを分けて検討します。未払分を免除する意思がないのに、すべて清算したと読める書面へ署名しないようにしてください。生活費が足りない場合には、回収手続と利用可能な支援の確認を並行します。
差押えを申し立てる前には、相手の勤務先や取引金融機関の情報がいつのものかも確認します。古い勤務先を現在の勤務先と思い込むと、手続が空振りになることがあります。不明な事項は推測で埋めず、情報取得の手続を利用できるか相談してください。
よくある質問
Q. 普通の合意書しかなければ差押えはできませんか
A. 改正後の先取特権による手続を検討できる場合があります。書面の内容、対象期間、証明資料などの確認が必要です。
Q. 月額8万円が最低額になったのですか
A. 違います。先取特権が付与される範囲の数字で、養育費の最低額や標準額ではありません。
Q. 履行勧告で強制的に取り立ててもらえますか
A. 勧告と差押えは別の手続です。勧告だけで給与等から強制的に回収するものではありません。
Q. 相手の勤務先が分からない場合は諦めるしかありませんか
A. 情報取得等の手続を検討できることがあります。利用要件を確認します。
Q. 未払表は弁護士に頼む前に完成させる必要がありますか
A. 完成していなくても相談できます。合意書と取引履歴があれば、確認しながら整理できます。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 裁判所 養育費に基づく差押え
- [3] 裁判所 養育費等のワンストップ執行手続
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

