DVがある離婚で住所を知られたくないとき 安全確保と裁判所への申出

離婚

配偶者からの暴力や脅迫を受けて別居した場合、離婚の話合いを進めるために避難先を知らせなければならないのか、不安になることがあります。裁判所の手続では住所等の情報を守るための制度や申出が用意されています。ただし、書類を出せば自動的にすべての情報が隠されるわけではありません。提出前から安全に関する事情を伝えることが大切です。

身の危険が迫っているときは、離婚の条件交渉や証拠集めより安全を優先してください。緊急の場合は110番、相談先が分からない場合はDV相談ナビ「#8008」から最寄りの配偶者暴力相談支援センターへ相談できます。[1]

この記事の内容

居場所だけでなく連絡手段も確認する

転居先を相手に伝えていなくても、共有しているメール、位置情報、家族用のアカウント、郵送物などから情報が伝わることがあります。支援者や弁護士との連絡に使う電話番号やメールが、相手に確認されないかを検討します。

電話で話せる時間、留守番電話に事務所名を残してよいか、郵送してよい住所を、相談の初めに伝えてください。普通なら便利な連絡方法でも、家庭の状況によって危険につながることがあります。安全な連絡方法は本人の希望と実情に合わせて決めます。

相手と会って事情を説明すれば理解してもらえるとは限りません。危険を感じる場合に直接面会を無理に試みる必要はありません。支援機関への相談と、代理人を通じる法的な対応を組み合わせて考えましょう。

裁判所に提出する前に秘匿の相談をする

家事事件では、相手に知られたくない情報について非開示を希望する申出を検討できます。また、住所や氏名等が知られることで社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある場合などには、当事者間の秘匿制度を検討します。要件や効果、手数料などは制度によって異なります。[2]

「非開示希望」と書けば必ず開示されないというわけではありません。裁判官の判断が関わり、事件の種類によって利用する手続も異なります。離婚調停から離婚訴訟へ進む場合など、以前と同じ扱いが当然に続くと考えず、改めて確認します。

例えば、申立書だけを確認しても、添付した住民票や領収書に住所が残っていれば問題になります。提出する書面全体について、どの情報を守りたいのか、その理由は何かを整理し、裁判所や弁護士に相談してください。

住所を推測できる情報にも注意する

学校名、医療機関名、勤務先、日常利用する店舗、郵便物の宛先から、生活圏が推測されることがあります。写真の背景や位置情報、画面の通知表示なども、必要以上の情報を含んでいないか確認します。

資料を提出する目的と、情報を隠す必要性を両方考えます。例えば治療費を示す領収書は、金額や受診日が必要でも、病院名の取扱いについて配慮が必要な場合があります。何を残し、何について非開示等を求めるか、独断で処理せず確認することが重要です。

自分用の原本と提出用の写しを分けます。原本まで塗りつぶしてしまうと、後で内容を確認できなくなります。また、提出先ごとに書類の扱いが異なるため、一度作った写しを別の手続へそのまま使ってよいとは限りません。

調停当日の安全についても伝える

裁判所の建物へ行くこと自体が不安な場合、相手と会いたくない事情を早めに伝えます。待合、入退庁、期日の進行、ウェブ会議の利用などについて、可能な配慮を確認します。必ず希望どおりになると決めつけず、具体的な不安を説明することが必要です。[2]

「暴力があった」とだけ伝えるより、接近や待伏せへの不安、以前の脅迫、子どもの同伴の必要性など、当日の安全に関係する事情を整理します。相手が期日以外に連絡や訪問をしてくる場合も、日時と内容を記録します。

裁判所の外で会う約束をしないと話合いが進まない、ということではありません。本人同士で安全に交渉できない事情を前提として、代理人や裁判所を通じる方法を考えます。

保護命令と離婚手続は役割が異なる

接近や連絡をめぐる危険については、DV防止法に基づく保護命令などを検討する場合があります。離婚の条件を決める手続と、安全を確保するための手続は同じではありません。離婚調停を申し立てただけで、相手の接近が当然に禁止されるわけではありません。

保護命令の対象となる事情や必要な資料は、現在の法律と具体的な状況に照らして確認します。暴力や脅迫の内容、診療記録、警察や支援機関への相談歴などを、安全に取得できる範囲で整理します。証拠を取るために危険な接触をすることは避けてください。

申立てを検討している間の安全も重要です。裁判所の判断を待つ間にどう連絡を受けるか、子どもの迎えに誰が対応するかなど、生活上の対策を支援機関と相談します。制度の利用と日々の安全を並行して考えます。

子どもに関する情報共有も個別に設計する

子どもの学校や通院に必要な連絡があっても、それを理由に避難先やすべての生活情報を無制限に渡す必要があるとは限りません。何のためにどの情報が必要かを分け、安全に配慮した共有方法を検討します。

2026年改正後の親権の判断でも、DVや虐待のおそれ、共同して親権を行うことの困難さは重要な事情です。共同親権という言葉を理由に、危険な直接協議を当然に要求されるものではありません。子どもの利益と安全を中心に考えます。[3]

学校や保育施設には、必要な範囲で送迎や連絡の注意点を伝えます。職員に夫婦の紛争の結論を決めてもらうのではなく、誰へ連絡するか、問題が起きたときにどう対応するかを確認します。子ども自身に居場所の秘密を守る責任を負わせ過ぎない配慮も必要です。

相談の最初に伝えたいこと

安全に連絡できる方法、現在相手に知られている情報、最近の接触や脅迫、子どもの状況を優先して伝えます。離婚に至る経緯の詳細は、その後に整理しても構いません。裁判所から書面が届いている場合は、提出や期日の期限も確認します。

札幌・手稲で離婚を検討しながら安全に不安がある方は、通常の条件交渉と同じ順番で進めないことが大切です。支援機関と連携し、情報の取扱いと手続の進め方を検討してください。

避難後の連絡経路を点検する

避難先を知られないようにしていても、家族で共有する写真、位置情報、宅配の登録、学校への連絡先などから生活圏が伝わる場合があります。自分が管理するサービスの共有設定を確認し、安全な連絡先を支援機関や代理人と相談してください。設定を変えることで相手へ通知が届く可能性も考慮します。

裁判所への提出書類は、本文だけでなく、領収書や学校の通知など添付資料も点検します。住所の記載がない資料でも、施設名や利用店舗等から居場所が推測される場合があります。どの情報が安全上の問題になるかを伝え、提出前に取扱いを確認します。

安全確保のために連絡を制限する必要がある場合でも、裁判所や弁護士から必要な連絡を受け取れる経路は確保します。相手に伝える連絡先と、手続機関に伝える連絡先をどう扱うかは別問題です。自己判断で書類の送付先を曖昧にせず、制度を利用して調整することが大切です。

よくある質問

Q. 離婚調停をすると避難先を必ず知られますか

A. 必ず知られるわけではありません。非開示希望や秘匿制度などを、提出前に相談します。

Q. 非開示希望を書けば必ず隠されますか

A. 必ずとはいえません。対象、理由、事件の種類に応じて裁判所が判断します。

Q. 住所を塗りつぶした原本を出せばよいですか

A. 原本は保存し、提出方法を確認してください。必要な情報まで失わないようにします。

Q. 弁護士からの郵便で相談を知られそうです

A. 相談時に郵送の可否と安全な連絡方法を伝え、個別に方法を決めます。

Q. 今すぐ危険な場合もまず離婚相談ですか

A. 緊急時は110番などによる安全確保を優先してください。離婚条件の整理は安全を確保してから進めます。

参考資料(一次資料)

ご相談について

札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

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