離婚に際し、自宅に住み続けるか売却するかを考えるときは、不動産の名義だけでなく住宅ローンの契約を確認する必要があります。夫婦の合意書に「今後は妻が返済する」と書いても、銀行に対する夫の債務が当然に消えるわけではありません。
自宅の処理は、財産分与、住まいの確保、金融機関との契約、登記や税務が重なる問題です。どれか一つだけを決めて残りを後回しにすると、離婚後も長く負担が残ることがあります。資料をそろえ、実行できる順序を考えましょう。[1]
この記事の内容
- 所有者と借りた人と保証人を確認する
- 自宅の価額とローン残高を同じ時点で見る
- 売却する場合は期限と役割を決める
- 一方が住み続ける場合は金融機関に確認する
- 財産分与の調整金と住宅費を混ぜない
- 登記と税務の確認を含めて実行する
- 自宅の扱いを3つの案で比較する
- よくある質問
所有者と借りた人と保証人を確認する
登記事項証明書で所有者と持分を確認し、ローン契約書で債務者や連帯保証人などを確認します。単独名義、共有、ペアローン、連帯債務などでは整理する内容が異なります。毎月の返済口座の名義だけでは、契約上の責任は分かりません。
例えば、夫単独の所有で妻が保証人になっている場合、妻が家を出ても保証の問題は残り得ます。共有の家で一方だけが返済している場合も、返済と持分の関係を確認します。離婚による夫婦関係の解消と、第三者との契約関係は別です。
固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険などの支払も確認します。住宅ローンだけ払えば家の維持費がすべて賄えるわけではありません。住み続ける案では、毎月と年単位の費用を合計して生活の見通しを立てます。
自宅の価額とローン残高を同じ時点で見る
不動産の査定資料と、金融機関のローン残高資料を用意します。購入時の価格、固定資産税の評価額、現在の売却査定額は別の数字です。査定の前提や時点を確認し、都合のよい数字だけを使わないようにします。
売却見込額からローン残高を引いても、仲介手数料等の費用が別にかかります。残債を完済できるか、売却後に金銭が残るか、不足するかを分けて考えます。いわゆるオーバーローンの場合も、夫婦間の財産分与と債権者への返済を同じ計算だけで処理できるとは限りません。
札幌や北海道の住宅では、建物の状態、設備、除雪や修繕の必要性なども売却条件や居住費に影響します。地域の不動産事情は査定で確認し、法的な権利関係の整理と併せて検討します。
売却する場合は期限と役割を決める
売却方針に合意したら、仲介会社の選定、売出価格の決め方、価格を見直す条件、内覧、退去、残代金の精算を具体化します。「いずれ売る」だけでは、相手が動かないときに進まなくなります。
住んでいる人がいる場合、売却までの居住費と明渡しの時期を確認します。引越し先が決まらないまま売買の期限だけ約束すると、履行できないおそれがあります。学校や仕事の事情も踏まえ、実際の移動が可能かを検討します。
売却代金をどう分けるかについては、ローン返済、費用の控除、各自の取得額を明確にします。どの口座で受け、誰が何を精算するかを定め、計算資料を共有できるようにします。
一方が住み続ける場合は金融機関に確認する
所有権を一方へ移す案では、住宅ローンの借換えや債務者変更などが可能か金融機関に確認します。収入や審査の問題があり、夫婦が合意すれば必ず認められるものではありません。金融機関の承諾が必要な事項を、先に確認することが重要です。
夫婦間で「住む人が返済する」と合意しても、契約上の債務者が残る場合、返済が止まればその人へ請求が来る可能性があります。保証人の離脱についても同じです。夫婦間で負担を移したことと、銀行が従前の責任を免除したことを区別します。
例えば、離婚後も相手名義のローンを払い続ける案なら、支払の管理、残高確認、滞納時の対応、将来の名義変更まで考えなければなりません。長期間にわたる協力が現実に可能かを検討し、単純に「今までどおり」で済ませないようにします。
財産分与の調整金と住宅費を混ぜない
自宅を取得する人が他方へ代わりの金銭を支払う場合、その金額と支払原資を確認します。家には価値があっても、現金をすぐ用意できるとは限りません。借入れの見込みを確認せずに大きな一括支払を約束しないことが大切です。
子どもと住むために一定期間居住する案では、財産分与の最終的な帰属と、その期間の使用条件を分けます。養育費や婚姻費用の計算に住宅費が関わる場合も、同じ負担を二重に評価していないか確認します。
合意書には、所有権移転や売却が実行できなかった場合の対応も検討します。金融機関の審査が通らなかったとき、予定日に退去できないときなどを想定し、条件が宙に浮かないようにします。
登記と税務の確認を含めて実行する
合意しただけで登記が変わるわけではありません。必要書類、登記手続、費用の負担を確認します。名義変更や不動産の譲渡には税務上の問題が生じることがあるため、必要に応じて税理士等に確認します。離婚に伴う処理ならすべて無税だと決めつけないようにしてください。
財産分与の請求期間も確認します。2026年4月1日以後の離婚では原則5年、それより前の離婚では2年という違いがあります。売却の相談が長引いている間に、法的な期限の確認を忘れないことが重要です。[1][2]
相談には、登記事項証明書、ローン契約書、残高資料、査定、固定資産税等の資料を持参します。すべてがそろわなくても、名義と契約の関係を確認するところから始められます。住まいを守る案と、負担を切り離す案を現実的に比較しましょう。
自宅の扱いを3つの案で比較する
売却する、どちらかが住み続ける、当面共有等の状態を維持するという案について、実行に必要な条件を書き出します。売却なら手元に残る見込額と転居費、居住継続なら返済と維持費、当面維持するなら終了時期と将来の売却条件を比較します。
例えば、自宅を取得する人に借換えの見込みがない場合、名義だけ先に移すと金融機関との契約上の問題が生じるおそれがあります。夫婦の希望だけで実現可能と判断せず、金融機関への確認結果を踏まえて合意します。相手を保証から外せるかも別に確認してください。
マンションでは管理費や修繕積立金、戸建てでは設備更新や修繕の負担も考えます。どちらかが一時的に立て替える場合は、対象期間、金額、後日の精算方法を残します。退去後の光熱費、残置した荷物、鍵、火災保険等の対応も、引渡しの一覧に含めると漏れを減らせます。
不動産の移転や売却には税務上の確認が必要となる場合があります。財産分与という名前なら一切の税負担がないと考えず、具体的な方法と時期について税理士等にも確認します。法的な合意と実際の名義・ローン・税務の手続がつながる案を作ることが重要です。
自宅に住み続ける期間を限定する案では、終了日だけでなく、転居が遅れた場合の対応も確認します。住み続ける間の費用負担と、所有権の最終的な帰属を別々に記載すると、認識の違いを減らせます。
よくある質問
Q. 離婚協議書で返済者を変えれば銀行も従いますか
A. 夫婦間の合意だけで銀行との契約は当然に変更されません。金融機関への確認が必要です。
Q. 家を出れば保証人でなくなりますか
A. 家を出ることや離婚だけで保証が消えるわけではありません。
Q. 購入価格で自宅を評価すればよいですか
A. 現在の価額と異なることがあります。査定の時点や前提を確認します。
Q. ローンが家の価値を超えると何も話し合えませんか
A. 売却、返済、住まいなどを整理する必要があります。財産分与と債権者への義務を分けて検討します。
Q. 登記だけ先に変えてもよいですか
A. ローン契約や税務、合意条件への影響を確認してから進めることが重要です。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 法務省 りこんポータル 財産分与
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

