離婚の財産分与では、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産と、相続や贈与などで取得した財産を区別して検討します。親から相続した預金や土地について、結婚中に取得したという理由だけで必ず半分ずつになるわけではありません。ただし、現在の財産とのつながりを資料で示すことが重要です。[1]
相続したお金が生活用の口座へ入ったり、自宅購入の頭金に使われたりすると、どの部分が相続した資金か分かりにくくなります。「親のお金だったはず」という記憶だけでなく、取得から現在までの流れを確認しましょう。
この記事の内容
- 相続の事実と取得した財産を確認する
- 生活用口座へ入った後の動きを追う
- 自宅の頭金に使った場合は資料を結び付ける
- 相続した不動産を維持した経過も見る
- 相手に説明するときは一覧と資料を対応させる
- 合意に入れる範囲と残る問題を確認する
- 資金の流れを図にして説明する
- よくある質問
相続の事実と取得した財産を確認する
遺産分割協議書、遺言書、金融機関の手続書類、入金記録などから、何をいつ取得したかを整理します。不動産なら登記事項証明書、金銭なら入金先と金額を確認します。相続税の申告書があっても、それだけで現在の財産の全体が分かるとは限りません。
例えば、親の死亡後に複数回の入金があった場合、預金の分配、生命保険金、不動産売却代金などの性質が異なる可能性があります。まとめて「相続金」と呼ぶだけではなく、それぞれの根拠を確認します。
親から生前に渡された金銭については、誰に対する贈与だったのか、借入れだったのかという点も問題になります。夫婦への援助か一方への贈与か、当時の書面や送金の経緯を調べます。相続と生前贈与を同じ説明で処理しないことが大切です。
生活用口座へ入った後の動きを追う
相続した資金を給与口座へ移した場合、入金前後の残高とその後の支出を確認します。生活費として使われた部分、別の口座に残っている部分、投資に回した部分などを区別します。口座名義が自分であることだけで、現在残高のすべてが特有財産と説明できるわけではありません。
通帳の一部しか残っていない場合は、金融機関で取引履歴を取得できるか確認します。保存期間や費用は金融機関等によるため、必要な時期を絞って相談します。資料が消える前に着手することが重要です。
例えば、相続金500万円を入金した後、生活費の出入りが長年続き、別居時の残高が300万円だった場合、「残高のすべてが相続金」と直ちに断定することはできません。資金の出入りと、ほかの財産へ移っていないかを合わせて検討します。
自宅の頭金に使った場合は資料を結び付ける
相続した金銭を住宅購入の頭金に使った場合、相続金の入金、売買代金の支払、ローン借入れ、取得した持分を確認します。購入価格だけでなく、資金が実際にどう動いたかが重要です。
財産分与での評価は、現在の自宅の価値、ローン残高、夫婦による返済などの事情も関わります。相続金を出したという理由だけで、自宅全体が対象外になるとも、当時の支出額が必ずそのまま返るとも限りません。具体的な計算方法を検討する必要があります。
親からの援助が頭金の一部であった場合は、その援助の性質も確認します。相手が「夫婦への贈与だった」と主張しているなら、贈与契約書、親とのやり取り、送金先、当時の説明などを整理します。
相続した不動産を維持した経過も見る
相続した土地や建物については、取得の経緯と、その後の修繕、ローン、賃貸経営などを確認します。元の財産の性質と、婚姻中の協力による取得・維持の評価は区別して考える必要があります。[1]
例えば、一方が相続した建物について、夫婦の収入から大きな改修費を出していた場合、その支出をどう扱うかが問題になります。単純に名義だけで結論を出すのではなく、工事の内容、費用の出所、財産の維持への関与を整理します。
賃料収入や売却代金がある場合も、どの口座へ入り、何に使われたかを確認します。元の不動産、収益、代わりに取得した財産を区別し、同じ価値を二重に計上しないようにします。
相手に説明するときは一覧と資料を対応させる
説明の表には、財産の名称、取得理由、取得日、当初の金額、資金移動、現在の形、資料番号を記載します。相手が確認できる形にすると、対象かどうかの争いと、金額の争いを分けやすくなります。
「親の財産だから見せない」と資料を一切出さないと、特有財産であること自体を確認できません。必要な範囲の開示を検討し、関係のない第三者の情報や住所等には配慮します。提出先に応じた資料の扱いを相談してください。
こちらが相手の特有財産の説明を受ける場合も同じです。相続した事実だけでなく、分与対象から除くと主張する現在の財産とつながっているかを確認します。疑いだけで否定せず、どの点に資料が足りないかを具体的に示します。
合意に入れる範囲と残る問題を確認する
特有財産について合意できたら、財産一覧にその扱いを明記します。対象から除外する財産と、対象に含めて調整する財産を混ぜないようにします。未確認の財産が残っている場合には、清算条項の意味を理解してから署名します。
財産分与の家庭裁判所への請求期間は、2026年4月1日以後の離婚で原則5年、それより前の離婚は2年です。親の相続資料を集めている間も、離婚に関する期限を確認する必要があります。[1][2]
相談には相続の資料だけでなく、自宅や預金など現在の財産資料も持参してください。札幌・手稲で特有財産の扱いが争いになっている方は、資金の流れが一部しか分からない段階でも、必要な調査と説明方法を検討できます。
資金の流れを図にして説明する
相続金の入金日と入金先を起点に、その後の移動を矢印でつなぐと、現在の財産との関係を確認しやすくなります。各移動について、出金日、入金日、金額、資料番号を記載します。複数の口座を経由している場合も、最初と最後だけでなく途中の動きを残してください。
例えば、相続金を定期預金にし、その満期金で投資商品を買った場合には、相続時の資料に加え、定期預金の満期記録と購入記録を確認します。投資後の評価額が増減している場合、当初の元金と現在の価値を同じものとして記載しないようにします。
現金で受け取った資金など、取引履歴だけでは説明しにくい場合は、遺産分割協議書、相続人間の連絡、領収書、当時の記録を探します。ただし、後から親族に都合のよい説明を書いてもらうのではなく、実際に確認できる事実を整理することが大切です。
財産の一部についてしか流れが分からない場合は、確認できた範囲と未確認の範囲を分けます。全額が特有財産であると断定するか、すべて諦めるかの二者択一にせず、どの部分をどの資料で説明できるかを個別に検討してください。
相続財産が別の財産と混ざった経過は、表や図の注記で説明します。金額が一致しない場合も、手数料や一部支出など分かる理由を書き、説明できない差額を推測で補わないようにします。調査済みの範囲が分かること自体も重要です。
よくある質問
Q. 結婚中に相続した財産は必ず半分ですか
A. 取得時期だけでは決まりません。相続等で取得した財産として区別して検討します。
Q. 自分名義の口座なら全額が特有財産ですか
A. 名義だけでは決まりません。給与や生活費の出入りと、相続金の流れを確認します。
Q. 頭金を相続金で出したら家全体が自分のものですか
A. 当然にそうなるわけではありません。購入資金、返済、現在価値などを踏まえて検討します。
Q. 親からの援助はすべて贈与ですか
A. 貸付けの場合や夫婦双方への援助の場合もあるため、当時の書面や経緯を確認します。
Q. 古い通帳を失くしたら説明できませんか
A. ほかの資料や取引履歴の取得を検討します。分かる時期と金額を整理して相談してください。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 法務省 りこんポータル 財産分与
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

