離婚届を提出しただけで、年金分割まで完了するわけではありません。離婚時の年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度です。相手の年金の受取額全体を、そのまま半分受け取る仕組みではありません。[1]
老後の生活を考えるうえで重要ですが、財産分与や養育費とは別の手続です。まず制度の違いを確認し、情報通知書の取得、割合の合意や裁判手続、年金事務所等への請求を区別して準備しましょう。
この記事の内容
- 合意分割と3号分割を区別する
- 情報通知書で話合いの前提をそろえる
- 合意した内容をどの書類にするか考える
- 2026年4月1日を境に請求期限を確認する
- 年金額と離婚後の家計を分けて試算する
- 手続の担当と完了確認まで決めておく
- 請求までの進行表を作る
- よくある質問
合意分割と3号分割を区別する
合意分割では、対象期間の厚生年金の記録について、当事者の合意や裁判手続で按分割合を定めます。分割の対象となる期間や割合の範囲は、情報通知書などで確認します。夫婦の一方だけが会社員だった場合に限られる制度ではありません。[1]
3号分割は、2008年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間について、一定の要件の下で相手の厚生年金の記録を2分の1ずつに分割する制度です。この部分について相手の合意は必要ありませんが、請求手続は必要です。[1]
結婚期間が長い場合は、3号分割だけでは対象期間全体を処理できないことがあります。「専業主婦だったから全部が自動的に半分」と判断せず、いつどの年金制度に加入していたかを確認します。
情報通知書で話合いの前提をそろえる
年金分割のための情報通知書は、対象期間や按分割合の範囲などを確認するための資料です。離婚前でも請求できるため、協議を始める前の準備として取得を検討できます。請求方法と必要書類は日本年金機構の案内を確認してください。[1]
勤務先が変わったことや、夫婦双方に厚生年金の加入期間があることだけで、自分で正確な分割内容を計算できるとは限りません。ねんきん定期便の額だけを見て、分割後の受取額を決め付けないようにします。
情報通知書を取得することと、分割を実際に請求することは別です。通知書が届いた段階で手続が終わったと考えず、その後に必要な合意、裁判所の手続、年金事務所等での請求を確認します。
合意した内容をどの書類にするか考える
合意分割で割合に合意した場合でも、口頭の約束だけで年金事務所の手続が完了するわけではありません。公正証書等を使う方法や、当事者が所定の手続で合意内容を確認する方法など、提出に必要な形式を調べます。[1]
離婚協議書には「年金分割に協力する」としか書かれていないことがあります。この表現だけで足りると判断せず、按分割合、対象となる手続、誰がいつ書類を準備するかを具体的に整理します。
離婚調停で扱う場合には、年金分割も希望することを伝え、情報通知書を用意します。財産分与の合意に集中して、年金分割について何も決めないまま離婚が成立することを避けましょう。合意できなければ、按分割合を定めるための裁判手続を検討します。
2026年4月1日を境に請求期限を確認する
2026年4月1日以後に離婚等をした場合、年金分割の請求は原則としてその翌日から5年以内です。2026年4月1日より前に離婚等をした場合は、原則としてその翌日から2年以内となります。離婚日の違いに注意してください。[2]
裁判手続を利用している場合には、所定の要件を満たすと確定等の日の翌日から6か月以内に請求できる特例があります。ただし、調停を申し立てたらいつまでも請求できるという制度ではありません。手続の種類、申立日、確定日等を確認します。[2]
相手が死亡した場合にも短い期限が問題になります。死亡を知ってからゆっくり準備すればよいと判断せず、直ちに年金事務所等へ確認してください。期限が迫っているときは、協議と必要な手続の準備を並行して進めます。[2]
年金額と離婚後の家計を分けて試算する
分割の対象は厚生年金の記録であり、国民年金の基礎年金や会社の退職金を同じ仕組みで分けるわけではありません。年金分割、退職金の財産分与、預金の分配を項目別に整理します。[1]
また、分割した記録があるからといって、離婚直後に毎月現金が支払われるものではありません。年金の受給要件や受給開始時期も確認し、離婚から受給開始までの生活費を別に考える必要があります。
住居費、健康保険、税金、働いて得られる収入などを含めて家計表を作ると、年金分割だけでは足りない部分が見えます。将来の年金見込額については、年齢等に応じて試算の案内が利用できるか、年金事務所で確認するとよいでしょう。
手続の担当と完了確認まで決めておく
準備する資料には、本人確認書類、基礎年金番号が分かる資料、婚姻期間等を確認する戸籍、情報通知書、合意や裁判結果を示す書類などがあります。必要書類は事情や請求方法により異なるため、提出先の最新の案内を確認します。
調停成立後は、調停調書を受け取っただけで終わらせず、年金分割の請求が済んだかを確認してください。期限、提出日、提出先、受付の記録、結果の通知を1つのファイルにまとめると、手続の抜けを防げます。
相手との直接連絡に負担や危険がある場合は、その事情も相談時に伝えます。合意が必要な範囲と不要な範囲、代理人を通じて調整する事項を分ければ、必要以上に相手と接触せずに進める方法を検討できます。
札幌・手稲で離婚条件を相談する際は、年金分割の情報通知書があれば持参してください。まだ取得していない場合も、離婚日、婚姻期間、就労歴を整理し、ほかの離婚条件と合わせて手続を検討できます。
請求までの進行表を作る
進行表には、情報通知書の請求日、受領日、割合を決めるための協議、必要書類の取得、年金事務所等への提出日を記載します。担当する人が変わっても、現在どこまで終わっているか分かる形にしてください。離婚届の提出と年金分割の提出を同じ欄にしないことが重要です。
裁判所の手続を利用した場合は、成立日や確定日と、それを示す書類を確認します。必要な証明書が後から必要になることもあるため、手続終了時に確認してください。期限に余裕があると思っていても、書類の取寄せや訂正に時間がかかる場合があります。
年金事務所等へ問い合わせるときは、離婚日、婚姻期間、対象制度、既にある書類を伝えると確認しやすくなります。一般的な案内だけで個別の請求期限を判断せず、裁判手続中であることや相手の死亡等の事情があれば必ず伝えてください。
請求後に通知が届いたら、対象者や期間等を確認し、分からない点をそのままにしないようにします。将来の年金受給のための手続と年金分割の手続は別に確認が必要です。通知を家計資料と一緒に保管し、生活設計を見直す際の資料にしてください。
受領した通知には取得日を記載し、相談用の写しを別に作っておくと、手続先へ原本を提出した後も確認できます。紛失した場合の再交付等は、発行元へ早めに問い合わせてください。
よくある質問
Q. 離婚届を出せば年金も分割されますか
A. 自動ではありません。年金事務所等への請求を別に行う必要があります。
Q. 相手の年金受取額の半分をもらえますか
A. 受取額全体を半分にする制度ではなく、対象期間の厚生年金の保険料納付記録を分割します。
Q. 3号分割には相手の同意が必要ですか
A. 対象となる3号分割には相手の合意は不要ですが、要件の確認と請求手続が必要です。
Q. 離婚前に準備できることはありますか
A. 情報通知書の取得などを検討できます。加入歴と婚姻期間を確認しておきましょう。
Q. 調停で合意したら手続は終わりですか
A. 終わりではありません。調停調書等を用いて、期限内に年金分割を請求する必要があります。
参考資料(一次資料)
- [1] 日本年金機構 離婚時の年金分割
- [2] 日本年金機構 年金分割の請求書と請求期限
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

