財産分与の対象は何か 預金と保険と証券を一覧にする

離婚

離婚時の財産分与は、預金残高だけを半分にすれば終わるとは限りません。保険、株式、不動産、退職金などの財産と、住宅ローン等の負債を整理し、何が分与の対象かを確認する必要があります。最初から結論を決めず、資料に基づく一覧を作ることが大切です。

民法768条は、婚姻中に取得または維持した財産の額や各当事者の寄与などを考慮することを定めています。2026年改正後は、寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいとする規定が置かれています。収入の多い人の名義だから、その人だけの対象外財産になるとはいえません。[1]

この記事の内容

財産の名義と分与の対象を区別する

預金や証券が一方名義でも、婚姻中の夫婦の協力によって形成された財産であれば、財産分与の対象として検討します。一方、婚姻前から持っていた財産や相続・贈与で取得した財産などは、形成の経緯を確認する必要があります。

例えば、夫名義の口座に給与を貯め、妻が家事や育児を担っていた家庭では、名義だけで夫の財産として扱うことはできません。逆に、同じ口座に結婚前の貯金や親から相続した金銭が入っている場合は、その部分を資料で区別する問題が生じます。

「自分名義だから全部対象外」「結婚中にある財産だから全部半分」というどちらの考え方も、資料を見ずに当てはめないようにします。まず所有や名義、取得時期、資金の出所を一覧にします。

一覧には基準日と評価日を入れる

財産を把握する時点と価額を評価する時点は、事案や財産の種類によって検討が必要です。別居時の残高、現在の残高、売却時の見込額を混ぜると、計算が合わなくなります。資料に記載された日付を必ず残しましょう。

一覧の基本項目は、財産の種類、名義、金融機関や契約番号、確認日、価額、資料、争いのある点です。金額が不明な財産も項目を作り、「不明」と記載します。空欄のままにするより、追加調査が必要だと分かります。

例えば、保険の払込保険料累計と解約返戻金を同じ意味で記載してはいけません。不動産も固定資産税の評価額、売却の査定額、購入価格は異なる数字です。数字を転記するだけでなく、何を表すかを明確にします。

預金は残高だけでなく動きも確認する

通帳や取引履歴から、対象とする時点の残高を確認します。別居前後に大きな出金がある場合には、使途、送金先、生活費としての支出かなどを調べます。出金があるだけで直ちに隠匿と断定せず、事実と説明を照合します。

夫婦それぞれの口座間でお金を移した場合、移動元と移動先を二重に計上しないようにします。子ども名義の口座についても、誰の資金で、どの目的で形成されたかを確認します。口座名義だけで当然に子の固有財産または夫婦の財産と決めつけないことが重要です。

相手の口座資料がない場合は、把握している金融機関や過去の資料を整理し、適切な開示や調査を相談します。無断でパスワードを利用するなどの方法は避けてください。

保険と証券は契約内容を確認する

生命保険等は、契約者、被保険者、受取人、保険の種類、解約返戻金を確認します。死亡時の保険金額と、現在の財産価値は同じではありません。分与のために解約するか、契約を維持し別の資産で調整するかも検討します。

株式、投資信託などは銘柄、数量、口座、価額の基準日を整理します。価格が変動するため、何月何日の価格で計算したかが分かるようにします。現物で分ける方法と売却して金銭で分ける方法では、費用や税務の問題も異なります。

積立型の商品や勤務先の持株制度など、毎月少しずつ形成された財産も見落とさないようにします。名称が分からなくても、給与明細の控除や金融機関からの通知を手掛かりにできます。

負債と将来の支払を別欄にする

住宅ローン、車のローン、その他の借入れについて、債務者、残高、返済口座、使途を確認します。財産分与で夫婦間の負担を決めても、金融機関との契約上の義務が当然に変わるわけではありません。

自宅の価額からローン残高を引く検討と、銀行に対して誰が返済するかは別の問題です。保証人になっている場合も、離婚しただけで保証が消えるわけではありません。資産の分け方と対外的な契約を区別してください。

個人的な借金をどのように扱うかは、その使途や経緯などを確認します。借入金があるから機械的に全部の財産から差し引く、夫婦だから必ず半分ずつ返すと決めつけないようにします。

合意前に漏れと期限を確認する

一覧ができたら、双方の資料を照合し、対象に含めるか争いがあるものと、価額だけ争いがあるものを分けます。総額が違う原因を特定すると、必要な追加資料が分かります。未開示の財産があるのに、すべて清算したという条項へ安易に署名しないことが重要です。

2026年4月1日以後の離婚では、財産分与について家庭裁判所に処分を求める期間は原則として離婚から5年です。それより前の離婚は従前の2年であり、新法によってすべて5年になるわけではありません。期限と資料散逸の両方に注意します。[1][2]

合意では、誰が何を取得するか、名義変更、引渡し、支払日、費用の負担を具体化します。数字上は公平でも実行できなければ紛争が残ります。札幌・手稲で財産分与を検討する方は、分かる範囲の一覧からご相談ください。

財産一覧の記載例と点検方法

一覧の1行には、財産の種類、名義、金融機関等、識別できる情報、残高の基準日、金額、対応する資料番号を記載します。口座番号等は必要な提出先に応じて扱い、第三者へ不用意に共有しないようにします。対象かどうか争いがある財産も、欄を分けて載せると論点が見えます。

例えば、証券口座から預金口座へ売却代金が移った場合、同じ時点の資料をそろえないと、証券と現金の両方が残っているように見えることがあります。口座間の移動は、出金側と入金側を対応させ、1つの資産の形が変わっただけか、新しい資産なのかを確認します。

保険では、毎月の保険料の合計と解約返戻金は異なります。契約者、被保険者、受取人、解約返戻金の基準日を確認してください。保険を分与のために解約すると保障への影響があるため、価値の清算方法と契約を続けるかという判断を分けて検討します。

双方の一覧に差がある場合は、見落とし、評価日の違い、対象性の争い、計算違いに分けて確認します。すべてを隠し財産の問題と決め付けず、資料不足を解消する順序を考えます。合意時には最終版の一覧を特定し、どの財産をどう扱ったかを残してください。

解約済みの口座や売却済みの資産も、基準となる時点に存在した場合には資料を確認します。現在ないという理由だけで一覧から消さず、処分した日と代金の行先を記載すると、説明の抜けを防げます。

よくある質問

Q. 専業主婦や専業主夫は財産分与を求められませんか

A. 収入がないことだけで対象外にはなりません。家事や育児などを含む夫婦の協力を踏まえて検討します。

Q. 相手名義の預金も調べる必要がありますか

A. 名義だけで対象が決まるわけではないため、形成の経緯や対象時点の残高を確認します。

Q. 保険は死亡保険金の額で分けますか

A. 現在の財産価値とは異なります。契約内容や解約返戻金などを確認します。

Q. 親から相続した預金も必ず半分ですか

A. 相続した財産は形成経緯を区別して検討します。資金の移動が分かる資料が重要です。

Q. 以前の離婚も請求期間が5年になりましたか

A. 2026年4月1日より前の離婚は原則2年のままです。離婚日を確認して早めに相談してください。

参考資料(一次資料)

ご相談について

札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

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