2026年4月1日施行の改正で、養育費の取決めがない場合に請求できる「法定養育費」の制度が始まりました。子1人当たり月額2万円という数字だけを見ると、これからの養育費はすべて2万円になったと誤解しがちです。しかし、法定養育費は通常の養育費を決めるまでの暫定的・補充的な仕組みであり、標準的な養育費の額を一律に決めたものではありません。[1][2]
取決めがないまま離婚した方は、対象となるかを確認すると同時に、双方の収入と子どもの生活に応じた養育費の取決めを進めることが大切です。既に合意や調停で金額を決めている方は、その定めを確認してください。
この記事の内容
- 対象となる離婚と監護の状況を確認する
- 月額2万円を最終的な養育費の基準にしない
- いつまで発生するかを確認する
- 支払能力に関する規定もある
- 請求と実際の回収は分けて考える
- 通常の養育費を決める準備を進める
- 請求額を説明するための記録
- よくある質問
対象となる離婚と監護の状況を確認する
法定養育費は、2026年4月1日以後に養育費の取決めをせずに離婚した場合などについて設けられた制度です。改正前の離婚にも当然に同じ金額が遡って発生するわけではありません。離婚の日、既存の取決めの有無、離婚後に主として子を監護している状況を確認します。[1][2]
民法766条の3は、離婚時から引き続き主として子の監護を行う父母の一方が、他方に支払を請求する仕組みを定めています。親権者という名称だけで請求の可否が決まるものではありません。実際の養育の状況を整理する必要があります。
父による認知の場合にも関連する規定があります。婚姻していなかった家庭について、離婚の説明だけで対象外と決めつけず、認知の時期や監護の状況を確認して相談してください。[1]
月額2万円を最終的な養育費の基準にしない
通常の養育費は、双方の収入、子どもの人数や年齢、個別の事情などを踏まえて検討します。法定養育費の数字があるから、話合いや調停でも2万円にしなければならないということではありません。必要な費用分担の検討を止めないことが重要です。
例えば、十分な収入がある相手から「法律で2万円になった」と言われても、その説明だけで最終的な合意をする必要はありません。収入資料を確認し、算定表なども参考に、適切な金額を検討します。反対に、法定養育費があるからどのような事情でも一切検討不要というわけでもありません。
合意書を作る際は、法定養育費としての未払と、今後合意する養育費を区別します。何月分までの支払を清算し、いつから新しい月額にするかが曖昧だと、重複や支払漏れが生じます。対象となる期間を一覧にすると整理しやすくなります。
いつまで発生するかを確認する
民法は、父母が協議で養育費を定めた日、養育費についての審判が確定した日、子が成年に達した日など、法定養育費の終わりとなる時点を定めています。始まりや終わりの月には日割りの計算も関わります。単純に暦月の数へ2万円を掛ければ、どの場合も正しいとは限りません。[1]
通常の養育費の合意が成人後の就学期間まで及ぶ場合と、法定養育費の終期は別の問題です。18歳以後の費用についても話し合う必要があるなら、法定制度だけに任せず、子どもの状況に応じて合意や手続を検討します。
複数の子どもがいる場合は、それぞれの年齢や監護の状況を確認します。1人について終期を迎えても、ほかの子の取扱いまで同時に終わるとは限りません。子どもごとに期間を分けると、計算の取り違えを防げます。
支払能力に関する規定もある
法定養育費には、支払能力を欠くために支払えないことや、支払によって生活が著しく窮迫することを証明した場合に、全部または一部の支払を拒める規定があります。単に「払いたくない」と言えば義務がなくなるわけではありません。[1]
支払う側は、収入、資産、失業や病気の経過などを整理します。請求する側も、相手の一言だけで諦めるのではなく、何を根拠としているのか確認します。事情に争いがある場合には、法定養育費と通常の養育費の両方を見据えて、適切な手続を相談します。
生活が苦しい場合でも、子どもの養育費の問題を放置すると未払額の把握が難しくなります。双方にとって、資料に基づいて早期に金額を決めることが重要です。収入が変化した時期と、各月の支払を分けて記録しましょう。
請求と実際の回収は分けて考える
法律上請求できることと、自動的に口座へ振り込まれることは同じではありません。相手に支払を求める方法、未払を証明する資料、回収のための手続を確認します。離婚日や子どもとの関係、監護の状況が分かる資料も必要になります。
2026年改正では養育費等の先取特権や執行手続にも変更があります。ただし、法定養育費の月額と、合意等で定めた養育費に関する先取特権の範囲を混同しないでください。どの権利に基づき、いくらの差押えを求めるのかを区別する必要があります。[1][2]
既に相手から一定の送金がある場合は、対象月や費目を確認します。子どもへの贈物、生活費の振込、別の清算金を一緒に扱わず、何の支払か整理します。根拠のない二重請求も、受け取った金額の見落としも避けましょう。
通常の養育費を決める準備を進める
法定養育費の対象であっても、収入資料を集め、将来の月額、支払日、終期、臨時費用を具体的に決める準備を進めます。直接の協議が難しい場合は、家庭裁判所の養育費に関する調停などを検討します。
例えば、離婚時に急いで届出だけ済ませた家庭では、子どもの教育費や医療費が未整理のままかもしれません。法定制度で一定の支払を求めることと、今後の生活に必要な取決めを作ることを並行させます。法定養育費の存在を、協議を先延ばしにする理由にしないことが大切です。
相談には、離婚日、子どもの人数と年齢、監護の状況、既存の書面、入金記録をまとめて持参します。相手の収入が分からなくても、不明な事項を整理して、調査と手続の順番を検討できます。札幌・手稲で養育費の取決めがない方は、対象の確認からご相談ください。
請求額を説明するための記録
法定養育費を検討するときは、離婚日、子どもの人数と年齢、主に誰が継続して養育しているか、既存の合意の有無を整理します。口頭の合意がある場合や、毎月一定額が送金されている場合には、その経緯も確認します。「書面がない」という理由だけで、何も取り決めていないと決め付けないことが重要です。
通常の養育費について協議や調停を進めている場合は、法定養育費として受け取った額と対象月を記録してください。後に通常の養育費が定まった際、同じ期間の支払をどう整理するかが問題になります。入金の趣旨が分からない場合は、送金時の連絡等も保存します。
法定養育費は、個々の家計に合った金額を十分に話し合うことを不要にする制度ではありません。収入資料や子どもの教育・医療の状況を準備し、通常の養育費を定めるための協議を進めます。制度の額だけを見て、子どもに必要な費用全体の検討をやめないようにしてください。
よくある質問
Q. 今後の養育費は一律2万円ですか
A. 違います。法定養育費は暫定的・補充的な制度で、通常の養育費の適正額を一律に定めるものではありません。
Q. 2025年に離婚した場合も自動的に発生しますか
A. 改正前の離婚に当然に同じ制度が適用されるわけではありません。通常の養育費の請求を含めて検討します。
Q. 既に月5万円の合意があれば2万円になりますか
A. 法定養育費の新設だけで、既存の合意が2万円へ変更されるものではありません。
Q. 請求しなくても自動送金されますか
A. 自動送金の制度ではありません。支払を求め、未払の場合は必要な回収手続を検討します。
Q. 子どもが18歳を過ぎた費用は不要になりますか
A. 法定養育費の終期と、合意等に基づく通常の養育費の終期は区別します。進学などの事情を踏まえて検討します。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 法務省 りこんポータル 法定養育費
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、離婚に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

