2026年10月1日施行 同一労働同一賃金の改正と介護事業者の対応

介護事業者向け

2026年10月1日から、同一労働同一賃金に関する施行規則とガイドライン等が改正されます。介護事業者がまず取り組むべきことは、パート・有期契約職員に交付する労働条件通知書の見直しと、正職員との待遇差の点検です。[1]

「10月1日から同一労働同一賃金が強制される」と聞くと、それまでは対応不要だったように思えるかもしれません。しかし、不合理な待遇差を禁止する制度は既に施行されています。今回は、説明を求められることの明示を追加し、手当や休暇などの判断基準をより具体的にする改正です。訪問介護、通所介護、施設運営などの事業者向けに、準備の順序を整理します。

この記事の内容

10月1日に何が変わるのか

パートタイム・有期雇用労働法は、2020年4月に施行され、中小企業にも2021年4月から適用されています。小規模な介護事業所だから、今回初めて対象になるという関係ではありません。同じ法人の正職員とパート・有期契約職員との間で、基本給や手当、福利厚生などに不合理な違いがないか、既に確認が必要です。[1]

今回の改正は、雇入れ時の明示事項の追加、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し、雇用管理指針の見直しという3つが中心です。すべての職員の月給を一律にそろえる改正ではありません。個々の待遇について、業務・責任や配置変更の範囲など、その待遇の目的に関係する事情を踏まえて判断します。[2][3]

例えば、勤務時間の異なる職員の月額給与だけを並べても、比較としては不十分です。一方、基本給に差を設けられる事情があっても、それだけで家族手当や休暇の違いまで当然に説明できるわけではありません。給与総額の印象で判断せず、支給項目ごとに確認することが出発点です。

労働条件通知書に説明を求められる旨を追加する

10月1日以降にパート・有期契約職員を新たに雇い入れるときは、通常の労働者との待遇の違いの内容・理由などについて、説明を求めることができる旨を、書面の交付等により明示する必要があります。根拠となる省令の改正と施行日は、既に公布されています。[4]

実務では、採用時に使う通知書のひな形を差し替え、相談先の担当者と連絡方法を確定させます。書類を直しても、施設長や採用担当者が古い様式を使い続ければ対応が漏れます。本部、各施設、採用代行先で使用する書式を確認し、適用日と管理担当者を共有しておくとよいでしょう。

厚生労働省のリーフレットでは、この明示義務の違反について10万円以下の過料が示されています。これは明示義務に関する説明であり、賃金差があれば一律に10万円の罰金が科される、という意味ではありません。[5]

既に働いている職員についても、待遇差の点検を後回しにはできません。今回の新たな雇入れ時の明示義務と、既存職員を含めた待遇改善を分けて管理します。契約更新時などに説明を求められることを周知し、分かりやすい資料を渡す対応は、改正後の指針で望ましい取組とされています。[2]

賞与と退職金は支給目的から点検する

改正ガイドラインでは、賞与や退職手当には、働いたことへの対価の後払いや長年の貢献への報償など、さまざまな性質・目的があることが示されます。その目的がパート・有期契約職員にも当てはまるのに、職務等の違いに応じた均衡のとれた支給をしない場合は、不合理と判断される可能性があります。[2][6]

したがって、「パートだから賞与なし」とだけ記載された規程は、理由を掘り下げて確認する必要があります。他方、改正によって全員に同額の賞与・退職金を支払う義務が一律に生じると説明するのも正確ではありません。支給目的、担当業務、責任、勤続状況、評価方法などを整理した上で検討します。

介護事業所で点検するなら、まず直近の賞与計算を1件取り出し、どの項目が支給額に影響したかを追います。施設の業績への貢献を評価する部分と、管理業務の責任を評価する部分が混在していれば、それぞれを説明できるようにします。規程上の建前と、実際の計算方法が一致しているかも確認しましょう。

家族手当や無事故手当も見落とさない

家族手当については、契約更新を繰り返すなど、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期契約職員に、正職員と同一の手当を支給する考え方が追加されます。何年以上なら該当するという一律の年数は示されておらず、契約期間や更新回数などの事情を踏まえて判断します。[3][6]

無事故手当についても、業務内容が同一である場合には同一の手当を支給する考え方が示されます。送迎担当者に無事故手当を支給している事業所では、パートの運転手だけが対象外になっていないか、まず確認します。名称が違うだけで同じ目的の手当を支払っている場合も、実際の内容から点検します。[6]

住宅手当は、その制度が転居を伴う配置変更に対応するものかどうかによって、検討すべき事情が変わります。転勤の負担を理由にしていても、実際には正職員にも転居を伴う配置変更がないのであれば、規程に「転勤あり」と書いてあるだけでは十分とはいえません。[6]

休暇や福利厚生も一覧に含めます。賃金台帳だけでは、夏季冬季休暇、勤続表彰、施設の利用条件などの違いは見えません。給与担当者だけで完結させず、施設運営やシフト管理の担当者にも、正職員とパートで扱いを変えている場面を確認してください。[2]

説明できる資料と相談の流れを用意する

改正後の雇用管理指針では、待遇差を説明する際、資料を使って口頭で説明するか、説明すべき事項を記載した理解しやすい資料を交付する等の方法をとることが示されます。「正職員とは契約が違うから」という説明だけで終わらせない準備が必要です。[7]

例えば、「手当の名称」「支給する目的」「対象者」「金額の決め方」「差を設ける具体的な事情」を1枚に整理します。これは法定の統一様式ではなく、説明のための実務上の整理方法です。職員から尋ねられたときに、担当者によって回答が食い違わないかも確認します。

説明資料には、他の職員の氏名や個別の給与情報を不用意に載せないようにします。質問を受けた日、対象となった待遇、説明した内容、追加確認が必要な点を残す運用も有用です。すぐに答えられない質問は、本部で確認する担当者と回答予定日を決め、現場だけで判断を抱え込ませないようにしましょう。

施行前後の作業を担当者ごとに決める

まず、採用担当者が通知書の新しい様式と説明窓口を確認します。次に、給与担当者が基本給・賞与・各種手当を一覧にし、施設長が実際の業務と責任、配置変更の運用を照合します。その上で、経営者が見直しの必要な項目と実施時期を決め、必要な規程整備と職員への説明を進めます。

資料は、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、賞与の算定資料、職務分担表をそろえると検討しやすくなります。契約上の役割と現場の実態に違いがあれば、その違いも書き出してください。10月1日までに通知書だけを直して終了、という進め方は避けたいところです。

正職員の手当を廃止して差をなくす方法を安易に選ぶことも適切ではありません。今回の改正はパート・有期契約職員の待遇改善を目指しており、正職員の待遇を引き下げる場合には、労働条件の不利益変更の問題が別に生じます。[3]

よくある質問

Q. 小さな介護事業所にも今回の改正は関係しますか。

A. 関係します。中小企業にもパートタイム・有期雇用労働法は既に適用されています。事業所の規模だけを理由に対応を省略せず、パート・有期契約職員を雇用しているかを確認してください。[1]

Q. 10月1日から正職員とパートの給与を同じにする必要がありますか。

A. 一律に同じ月額にする制度ではありません。個々の待遇について、業務や責任などの事情と、その待遇の目的を踏まえ、不合理な差がないかを判断します。[3]

Q. 労働条件通知書に項目を追加すれば対応は終わりですか。

A. 終わりではありません。通知書の整備に加え、実際の待遇差を点検し、求められた説明に対応できる資料と窓口を用意する必要があります。[7]

Q. 家族手当は勤続何年からパートにも支給するのですか。

A. 改正資料には全国一律の年数はありません。相応に継続的な勤務が見込まれるかを、契約期間や更新状況などから判断します。自社だけの年数基準を設ければ安全ということではありません。[3]

Q. 派遣で働く介護職員も同じ扱いですか。

A. 派遣労働者についても10月1日から関係する改正がありますが、派遣元と派遣先の役割や待遇決定方式を区別する必要があります。直接雇用向けの通知書対応をそのまま当てはめず、派遣元と対応範囲を確認してください。[8]

参考資料(一次資料)

ご相談について

札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、介護事業者の雇用契約、賃金規程、職員との労務トラブルについてご相談を承っています。通知書や規程、実際の業務分担が分かる資料をご用意いただければ、待遇差の点検と対応の順序を整理します。ご相談は電話011-558-1763へお問い合わせください。

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