長年親の介護を担った子が、ほかのきょうだいと同じ割合で相続することに納得できない場合があります。相続人が療養看護等によって財産の維持や増加に特別に貢献したときは、寄与分が問題になります。ただし、介護をしたという事実だけで相続分が自動的に増える制度ではありません。[1][2]
介護の負担の大きさと、法律上の寄与分の評価をつなぐには、本人の状態、実際の介護内容、期間、費用負担、受けた対価等を確認する必要があります。ここでは、話合いと相談のために整理したい記録を説明します。
この記事の内容
- 寄与分が問題になるのは相続人の特別な貢献
- 親の状態を期間ごとに整理する
- 実際に行った行為と頻度を記録する
- 支出と受け取ったお金を分ける
- 財産の維持にどうつながったかを説明する
- 話合いでは具体的な提案と資料を示す
- 合意できない場合と時間の制限
- よくある質問
寄与分が問題になるのは相続人の特別な貢献
民法904条の2は、共同相続人が事業への労務提供、財産上の給付、療養看護等により、被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与した場合の相続分を定めています。家族としての感謝や、精神的な支えの評価だけで決まるものではありません。[1]
介護によって外部サービス等の費用が抑えられ、財産の維持につながったかなどが検討されます。ただし、介護時間に一般的な賃金を掛ければ、その全額が当然に認められるという計算ではありません。
相続人ではない親族が介護した場合は、寄与分そのものではなく、特別寄与料等の別の制度が問題になります。例えば子の配偶者が中心的に介護した場合には、実際に誰が何をしたかを分けて整理してください。[1]
本人が相続放棄をしている場合や、既に遺産分割が成立している場合も、同じ前提で請求できるとは限りません。相続上の立場と協議の進行状況を、介護内容と一緒に確認します。
親の状態を期間ごとに整理する
介護が必要になった時期、病状、要介護認定、入退院、施設利用等を時系列にします。要介護度は参考資料になりますが、それだけで家族が実際に行った介護内容や寄与額が決まるわけではありません。
例えば同じ5年間でも、初めは買物の手伝いが中心で、後半は食事・排泄・移動の介助が必要だった場合、負担は同じではありません。状態が変わった時点で期間を区切ると説明しやすくなります。
入院や施設入所の期間は、在宅介護の期間と分けます。施設の職員が担った部分、家族が通院や手続を担当した部分、別の親族が対応した部分を明らかにしてください。
医療・介護の記録は、取得できる立場と範囲を確認して集めます。他の利用者や第三者の情報を不必要に含めず、相談や手続に必要な事項を示せる形で整理することが大切です。
実際に行った行為と頻度を記録する
介護日誌、予定表、連絡帳、ケアプラン、通院の記録等から、食事、入浴、排泄、服薬の確認、移動、夜間対応等を整理します。「毎日介護した」という表現だけでなく、典型的な1日の内容と例外を記載してください。
毎日同じ時間数を後から機械的に記入するより、当時の記録がある日と記憶に基づく推定の日を分ける方が正確です。仕事の勤務表や交通費の記録が、対応した時間を確認する手掛かりになることもあります。
家族複数で介護していた場合は、分担を明らかにします。自分が連絡の窓口だったことと、身体介護をすべて担ったことは同じではありません。外部サービスや他の家族の負担を除外せずに整理します。
介護のために仕事を減らしたり退職したりした場合は、その事実も伝えます。ただし、失った収入がそのまま寄与分になるとは限りません。本人の財産の維持・増加との関係を含めて検討します。
支出と受け取ったお金を分ける
親の医療費や介護用品代を自分が支払った場合は、請求書、領収書、口座の出入金を整理します。親の年金や預金から出した支出と、自分の固有財産から負担した支出を混ぜないようにしてください。
親から生活費や介護の対価を受け取っていた場合は、その金額と目的を確認します。対価を受けた部分があることを隠さず、実費の返還、贈与、労務への報酬等を区別します。
同居により住居費等の利益を受けていた場合も、生活全体の事情として確認が必要になることがあります。ただし、同居していたというだけで介護の貢献が全部否定されると決めつけるものでもありません。
立替金の返還請求と寄与分の主張が重なる場合は、同じ支出を二重に計上しないようにします。「介護関係のお金」という1つの合計にせず、支出の性質ごとに表を分けると相談しやすくなります。
財産の維持にどうつながったかを説明する
寄与分の検討では、介護の大変さに加えて、その行為が財産の維持や増加にどう関係したかを整理します。利用していたサービス、家族が補った時間、必要だった介助等を、当時の資料に沿って示してください。[1]
仮に外部へ依頼した場合の費用を参考にする場合も、家族の介護内容と同じサービスなのか、実際に必要だったのかを確認します。専門職の料金表を見つけて、すべての時間へ一律に掛けるだけでは十分ではありません。
介護以外に、親の事業を無償で支えた、自分の資金を提供した等の事情があれば、それぞれ分けて整理します。労務の提供と資金援助では、必要な証拠や評価の仕方が異なります。
寄与分には、遺贈との関係を含めた額の制限もあります。本人がどれほど苦労したかだけで遺産全額を優先的に取得できるわけではないため、遺産と遺言の全体像を確認してください。[1]
話合いでは具体的な提案と資料を示す
家族への説明は、介護期間、主な内容、金銭負担、受けた対価、求める調整を順にまとめます。すべての経緯を長文で送るより、争点を示す一覧と根拠資料を対応させると検討しやすくなります。
ほかの相続人が介護を知らなかった場合は、まず事実の共有を進めます。「何もしていない人には権利がない」といった表現で相続人の資格を否定するのではなく、寄与をどのように分割へ反映したいかを伝えます。
相手が寄与分を求めてきた場合も、介護そのものを否定することと、金額の算定根拠を確認することを分けます。どの期間と行為には異論がなく、どこが未確認なのかを明らかにしてください。
法的に寄与分が認められる範囲と、相続人全員が合意して別の分け方をすることも区別します。感謝の気持ちを含めた調整案を考える場合でも、他の財産や税務等への影響を確認してから合意します。
合意できない場合と時間の制限
協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の寄与分を定める処分の調停・審判を検討できます。遺産分割手続との関係があるため、寄与分の主張だけを出して終わりと考えず、必要な申立てを確認してください。[2]
相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として寄与分等による調整をしないという規定があります。例外や施行前の相続に関する経過措置もあるため、死亡日、申立ての有無、手続の時期を確認します。[1]
長く家族内で話し合っているから期限は関係ないと判断せず、資料を残して早めに相談してください。介護の内容が分かる記録と、相続関係・財産資料を合わせて持参すると、主張する方法と解決案を検討しやすくなります。
相談用の一覧には、資料が存在しない部分も明示します。記録が少ないことだけで諦めたり、逆に後から事実と異なる日誌を作ったりせず、当時の連絡や支払記録から確認できる範囲を整理することが大切です。
よくある質問
Q. 介護をした子は必ず多く相続できますか
A. 自動的には増えません。財産の維持・増加への特別な寄与を、具体的な事情から検討します。
Q. 要介護度が高ければ金額も決まりますか
A. 要介護度だけでは決まりません。実際の介護内容、期間、サービス利用や対価等を確認します。
Q. 退職した分の給料を全額請求できますか
A. 失った収入がそのまま寄与分になるとは限りません。財産への貢献との関係を検討します。
Q. 子の配偶者が介護した場合も同じ制度ですか
A. 相続人かどうかによります。相続人でない親族には特別寄与料等の別の検討があります。
Q. 日誌がなければ相談できませんか
A. できます。ケアプラン、連絡、支払記録等を集め、分かる範囲と推定を分けて説明します。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 裁判所 寄与分を定める処分調停
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、相続に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

