遺産分割の話合いが進まないとき 家庭裁判所の調停を使う準備

相続

相続人同士で話しても、実家の評価や預金の分け方で折り合わず、連絡するたびに口論になることがあります。遺産分割の合意が難しい場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。家族関係の不満だけでなく、何について判断が分かれているかを資料で整理すると、手続を進めやすくなります。[1]

調停は、裁判所が事情を確認しながら合意を目指す手続です。申し立てれば希望どおりの分割が直ちに実現するわけではありません。相続人、遺産、評価、具体的な分割案を順に準備することが大切です。

この記事の内容

まず合意できない理由を分ける

話合いが止まっている理由は、相続人の範囲が分からない、財産を開示してもらえない、評価額に納得できない、過去の援助や介護を考慮してほしいなど、事案によって異なります。これらを全部まとめて「相手が不公平」と説明するだけでは、次に必要な調査が見えません。

一覧には、争点、自分の考え、相手の考え、根拠となる資料、未確認の事項を書きます。相手の意見が分からない部分は推測で埋めず、まだ回答がないと記録してください。合意できている事項も別に残します。

例えば実家を長男が取得することには異論がなく、金額だけが争点なら、評価資料と代償金の資金計画が重要になります。誰が取得するか自体が未定なら、売却やほかの財産との組合せも含めた案を検討します。

過去の感情的な出来事を一切伝えてはいけないという意味ではありません。連絡が難しい理由や安全上の事情は伝えつつ、遺産分割で決める事項と区別して整理すると、必要な対応を求めやすくなります。

誰を相手方にするか確認する

遺産分割調停は、相続人のうちの1人又は何人かが、ほかの相続人全員を相手方として申し立てるものです。対立している人だけを相手にし、ほかの相続人を省いてよいわけではありません。[1]

戸籍で相続関係を確認し、死亡した相続人がいれば次の相続が生じていないかを調べます。相続放棄をした人については、その対象と正式な手続の有無を確認してください。家族間の「何もいらない」という発言とは区別します。

未成年者や行方不明者がいる場合には、代理や管理に関する手続が必要となる場合があります。住所が分かっているが返事をしない人と、所在が分からない人でも対応は異なります。調べた内容と郵便の結果を残して相談します。

遺言で財産を取得する人や相続分を譲り受けた人等がいる場合は、手続に参加すべき人を別途確認します。戸籍上の人数だけで判断せず、遺言や相続分の移転に関する書面も準備してください。

申立先と必要書類を調べる

遺産分割調停の申立先は、原則として相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所、又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。相続放棄等の申立先と混同し、亡くなった方の住所地へ当然に申し立てると考えないようにします。[1]

申立書のほか、事情説明書、進行に関する照会回答書、相続関係を示す戸籍、住所資料、遺産を示す資料等を準備します。相続順位や事案により必要書類が異なるため、裁判所の最新の案内を確認してください。[1]

不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預金残高証明や通帳、有価証券等の資料を、財産一覧と対応させます。書類を大量に並べるだけでなく、どの財産の何を示すか分かるように整理します。

申立前に入手できない戸籍等は追加提出が可能な場合があります。何が不足しているかを裁判所へ確認し、入手の見通しを伝えます。費用も、申立手数料と郵便料のほか、評価を争う場合の鑑定費用等を別に考える必要があります。

財産の範囲と評価を確認する

調停では、まず何が遺産か、どのような価値があるかを整理します。相続開始時の残高と現在の残高が違う場合は、その間の出入金も説明できるようにしてください。誰かが引き出したという疑いだけで金額を確定しないことが大切です。

不動産の評価については、査定額、評価証明の額、鑑定等の違いを確認します。資料によって金額が違うときは、評価時点と前提条件を比較します。調停では必要に応じて鑑定が行われる場合もあります。[1]

遺言の有効性や、財産が遺産に属するかという前提に深い争いがある場合には、別の訴訟等での解決が必要となることがあります。遺産分割調停に出せば、関連する請求がすべて同じ手続で最終判断されるとは限りません。

生前の使途不明金、相続人間の貸金、死後の管理費用なども、協議でまとめて解決できるか、別の法的請求となるかを区別します。自分が求めることを項目ごとに示して、手続との関係を相談してください。

希望する分割案を実行可能な形にする

「法定相続分を確保したい」という希望から、具体的にどの財産を取得する案にするかを考えます。預金と不動産を分ける、1人が取得して代償金を払う、売却して代金を分けるなど、複数の案を比べます。[2]

代償金を払う案なら、金額に加えて資金の裏付け、支払日、登記との順序を準備します。借入れが必要な場合は、融資を受けられるかの確認も重要です。調停が成立した後で資金がないと分かる事態を避けます。

売却する案なら、売却までの管理、残置物、価格の見直し、費用負担等を整理します。ほかの相続人の協力が必要な場面を洗い出し、単に「売って分ける」とだけ書かないようにしてください。

譲れない条件と、調整できる条件を分けておくと、期日で案を提示されたときに検討しやすくなります。納得できない内容をその場の雰囲気だけで受け入れる必要はありませんが、持ち帰って何を確認するかを明確にします。

期日で伝える内容と提出資料を整える

経緯の説明は、死亡後にした調査、提示した分割案、相手の回答、現在の争点を中心にまとめます。長い連絡履歴は、重要な箇所が分かる一覧を付け、原資料との対応を残してください。

裁判所に出す資料は、相手方に内容が伝わることを前提に、個人情報や第三者の情報の扱いを確認します。住所等を知られることで危険がある場合は、提出前に裁判所へ相談し、必要な制度や記載方法を確認してください。[3]

遠方での期日参加が難しい場合は、ウェブ会議等の利用が可能かを裁判所へ確認します。利用方法や適否は手続の状況に応じて判断されるため、自分だけの都合で欠席を続けず、事前に相談します。[3]

期日後は、次回までに提出する資料と回答する事項を記録します。家族への連絡担当と資料取得の担当を決め、同じ論点を毎回最初から説明し直さないよう、進行状況を更新してください。

成立した後と成立しない場合を確認する

合意する際は、取得する財産、支払日、登記や払戻しの協力、未解決事項の扱いを確認します。成立後に何をすれば実際に財産を取得できるか、必要書類も含めて整理してください。

遺産分割調停が不成立になると、自動的に審判手続が開始されます。離婚調停等と同じように、必ず別途訴訟を起こして最初からやり直す制度ではありません。審判で判断される事項と、別の請求として残る問題を確認します。[1]

相談時には相続関係、財産一覧、遺言、これまでの提案、期限に関する資料を持参します。調停を使うことを家族への攻撃と捉えるより、資料に基づいて解決方法を検討する場として準備することが大切です。

よくある質問

Q. 対立している兄だけを相手にできますか

A. 原則として、申立人以外の相続人全員を相手方にします。必要な当事者を確認してください。

Q. 被相続人の住所地の裁判所へ申し立てますか

A. 調停は原則として相手方の住所地等です。相続放棄の管轄と区別します。

Q. 調停委員が希望どおりの金額を決めてくれますか

A. 調停は合意を目指す手続です。希望額の根拠と実行可能な案を準備します。

Q. 調停が成立しないと手続は全部終わりますか

A. 遺産分割調停では、不成立の場合に審判手続が開始されます。

Q. 生前の預金の引出しも必ず一緒に解決しますか

A. 請求の性質によります。合意で扱う範囲と別の訴訟等が必要な問題を区別します。

参考資料(一次資料)

ご相談について

札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、相続に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

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