家族が亡くなると、葬儀や生活の手続と並行して相続への対応が必要になります。何から始めるか分からないときは、遺産の分け方を急いで決めるより、期限、相続人、遺言、財産と負債を順に確認しましょう。分からない項目を残した一覧でも、次に調べることが見えてきます。
相続には、家庭裁判所、法務局、税務署、金融機関など異なる窓口の手続があります。1つの窓口へ連絡しただけで全部が終わるわけではありません。ここでは、日本国内の一般的な相続を想定し、初期段階で整理したい事項を説明します。
この記事の内容
- 最初に日付と届いた書類を記録する
- 相続放棄の期限を先に確認する
- 遺言があるかを確認する
- 相続人を戸籍で確かめる
- 財産はプラスとマイナスの両方を調べる
- 税金や登記の期限を別の表にする
- 家族間の連絡と相談の準備を整える
- よくある質問
最初に日付と届いた書類を記録する
亡くなった日、自分が死亡を知った日、自分が相続人になったことを知った経緯を記録します。通常は同じ時期でも、疎遠な親族や先順位の相続人の放棄を通じて相続人になった場合には異なることがあります。日付は、期限を検討するための出発点です。[1]
郵便物、請求書、契約書、通帳、遺言らしい書面は、処分せず種類ごとに保管します。借金の通知には封筒も残してください。家族が受け取った日と自分が内容を知った日が異なる場合は、その事情を説明できるようにします。
葬儀の費用、自分が立て替えた支出、亡くなった方の預金から支払った額は、別々に記録します。後で精算できるかという問題と、相続放棄への影響は分けて検討する必要があります。領収書を残せば何でも問題なくなる、とは考えないことが大切です。
相続放棄の期限を先に確認する
相続放棄や限定承認には、原則として自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月という期間があります。相続放棄は、親族へ「何もいらない」と伝えるだけではなく、家庭裁判所への申述が必要です。[1][2]
借金がありそうな場合だけでなく、財産の状況が分からない場合も早めに調査します。期限内に判断材料がそろわないときは、熟慮期間の伸長を検討します。調査中だから自動的に延びるわけではありません。[2]
亡くなった方の財産を売ったり、自分のために使ったりすると、単純承認の問題が生じることがあります。放棄を考えているなら、遺品整理や預金の払戻しを先に進めず、何をしてよいか相談してください。保存のための行為と処分は個別に区別します。[1]
遺言があるかを確認する
自宅の書類や保管先について、家族が知っている情報を集めます。公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した遺言の可能性も確認します。家の中に見当たらないことだけで、遺言がないと決めつけないようにしましょう。
封のある遺言を見つけても、家族だけで開封を急がないでください。遺言の種類によっては家庭裁判所の検認が必要で、封印のある遺言の開封にも手続があります。検認は遺言の有効性を最終的に判断する手続ではありません。[1][3]
複数の遺言や書き直しの形跡があれば、すべて保存します。新しい日付があるというだけで、古い遺言の内容が全部無関係になるとは限りません。どの財産について何を変更したのか、遺言全体を見て確認する必要があります。
相続人を戸籍で確かめる
普段付き合いのある家族だけが相続人とは限りません。前の婚姻の子、養子、先に亡くなった子の子などが関係する場合があります。家族の記憶を手掛かりにしつつ、戸籍で身分関係と死亡の順序を確認します。[1]
相続人の範囲が確定する前に、一部の家族だけで最終的な遺産分割協議書へ署名することは避けます。連絡が取れない人や未成年者がいる場合には、その人を外すのではなく、必要な手続を検討します。
家族関係図には氏名、続柄、生死、分かる範囲の連絡先を記入します。まだ戸籍で確認していない情報には印を付けてください。確定した事実と推測が分かれているだけでも、相談時に必要な戸籍や調査先を整理しやすくなります。
財産はプラスとマイナスの両方を調べる
預金、不動産、有価証券、保険に関する資料を集める一方、借入れ、保証、未払金等も確認します。通帳に残高があっても、それだけで相続による負担がないとはいえません。請求書や返済の引落しも手掛かりになります。
一覧には、財産の種類、名義、金融機関等、確認日、金額、資料の有無を記入します。保険金のように契約内容によって受取人固有の権利となるものは、遺産に含まれるか別に検討します。税務上の取扱いとも区別が必要です。
例えば実家の土地と建物が別名義の場合、建物だけを見て「全部父の財産」と判断すると、別の相続が残っていることがあります。所在地が分かった不動産は登記事項も確認し、亡くなった方の持分や担保の有無を整理します。
税金や登記の期限を別の表にする
相続税の申告が必要な場合、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。遺産分割の話合いが終わっていないことだけでは、申告期限は延びません。申告の要否や未分割の場合の対応は税理士等に確認します。[4]
不動産の相続登記にも法定の申請義務があります。相続放棄の3か月や相続税の10か月とは別に、取得を知った時期、過去の相続かどうか、遺産分割の状況を確認します。具体的な期限と必要な対応は法務局等の案内に照らして整理します。[5]
「相続の期限」という1つの欄にまとめるより、手続名、期限の起算点、提出先、担当者、次にすることを分けます。金融機関の返答待ちと裁判所への申立期限も別です。資料がそろうのを待つ間に、ほかの期限を過ぎないようにしてください。
家族間の連絡と相談の準備を整える
最初の連絡では、財産の分け方を一方的に決めるより、判明している資料と調査の予定を共有します。原本の保管者と写しの渡し方を決めると、同じ書類を何度も取り寄せる負担を減らせます。個人情報は必要な相手に限定します。
対立がある場合は、「何も教えてくれない」といった評価だけでなく、請求した資料、連絡日、回答の内容を残します。相手が持っているはずという推測と、実際に保管していると確認できた事実を分けることが大切です。
相談には、死亡等の日付、家族関係図、遺言の有無、財産と負債の一覧、既に行った払戻しや処分の記録を持参します。全部そろわなくても構いません。期限が近い場合は、予約時点でその日付を伝えてください。
例えば預金は分かるが借金の調査が終わらない場合には、分割案を作るより先に、承認するか放棄するかの判断を守る手続が必要になることがあります。何を急ぎ、何を後で決められるかを区別すると、相続全体を進めやすくなります。
役割を分担した場合は、担当者の名前だけでなく、何をいつまでに確認するかも決めておきます。例えば戸籍を取る人と銀行へ問い合わせる人が別であれば、取得予定と必要な写しを共有します。代表者に任せきりにせず、各自に必要な手続が残っていないか確認してください。
よくある質問
Q. 家族へ相続しないと言えば借金も引き継ぎませんか
A. それだけでは家庭裁判所での相続放棄になりません。期限と申述手続を確認してください。
Q. 遺産分割が終わるまで税金の申告を待てますか
A. 未分割という理由だけでは期限は延びません。申告の要否と未分割の対応を税理士等へ確認します。
Q. 書類がないと弁護士へ相談できませんか
A. 相談できます。分かる家族関係、日付、財産、届いた通知から必要な調査を整理します。
Q. 自宅の片付けをすぐ始めてもよいですか
A. 相続放棄を考える場合は特に、財産の処分との関係を確認します。廃棄や売却の前に相談してください。
Q. 相続人全員が同じ期限になりますか
A. 何をいつ知ったかなどにより確認が必要です。1人の手続や期間伸長が全員に及ぶと考えないようにします。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 裁判所 相続の放棄の申述
- [3] 裁判所 遺言書の検認
- [4] 国税庁 相続財産が分割されていないときの申告
- [5] 法務省 相続登記の申請義務化
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、相続に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

