実家を1人が相続するとき 代償金の金額と支払方法を考える

相続

相続財産の中心が実家で、そこに住む子が引き継ぎたいと考える場合、ほかの相続人へ代償金を支払う分け方が選択肢になります。不動産を細かく分けずに取得者を決められる一方、評価額と支払資金が問題になりやすい方法です。[1][2]

「家の半額を払えば終わり」と単純に決める前に、相続人と相続分、ほかの遺産、債務、評価の基準を確認しましょう。金額だけでなく、支払時期、登記との順序、不払への備えまで含めて合意を作ることが大切です。

この記事の内容

代償分割の仕組みを確認する

代償分割は、1人又は一部の相続人が財産を現物で取得し、その代わりにほかの相続人へ金銭等を給付する義務を負う分割方法です。相続人全員が同じ不動産を共有し続ける方法や、売却して代金を分ける方法とは異なります。[2]

実家に住み続けたい人にとって、住まいを維持できる可能性がある一方、代償金を受け取る人は実際に支払われるかを確認する必要があります。家族だから後で何とかなるという前提では、合意後に別の紛争が生じかねません。

誰が取得するかは、長男である、同居していたといった事情だけで自動的に決まるものではありません。遺言の有無、相続関係、各人の希望、財産の性質等を踏まえて協議します。[1]

遺産が実家だけとは限らないため、預金等を別の相続人へ配分することで、必要な代償金を調整できる場合もあります。先に不動産だけを切り離して計算せず、財産全体の一覧から考えます。

不動産の範囲と権利を確かめる

「実家」という呼び方だけでは、相続対象を特定できません。土地と建物、私道持分、隣接地等を登記事項で確認します。亡くなった方が全部を所有していたのか、共有持分だけなのかも確認してください。

建物が祖父母名義のままの場合など、以前の相続が残っていることもあります。今回の相続人だけで全体を取得できるという前提を置かず、権利関係がつながっているかを調べる必要があります。

抵当権や賃貸借、配偶者の居住に関する権利等がある場合は、取得後の利用や価値に影響することがあります。登記上の担保と実際の残債務も分けて確認し、登記が残っているだけで残高を推定しないようにします。

相続登記の期限も別に管理します。代償金の協議が続いているから登記に関する義務を放置してよいわけではありません。法務局等の案内で、現時点で必要な対応を確認してください。[3]

評価額の違いを理解する

固定資産税の評価額、相続税の評価額、不動産会社の査定額は、目的や算定方法が異なります。同じ土地でも数字が一致するとは限らず、最も低い又は高い数字を当然の基準とするものではありません。

協議では、どの時点の、どの状態の不動産を、何の資料で評価するかをそろえます。建物の老朽化、修繕、接道、境界、利用状況等によって査定の前提が異なることもあるため、金額だけでなく説明部分を確認します。

複数の査定を取得した場合は、取得日、売却を想定する期間、土地建物を合わせた額か、解体費等を含むかを比較します。数字の平均を取れば必ず適切になるわけではありませんが、差が出た理由を知る手掛かりになります。

評価について合意が難しい場合には、専門家による評価や家庭裁判所での手続を検討します。鑑定等に費用と時間がかかる可能性も含め、争っている金額との関係を考えて方法を選びます。[1]

代償金を財産全体から計算する

説明のため、相続人が子2人で、ほかの調整事情がなく、協議で用いる実家の価額を2,400万円、預金を600万円と合意したとします。各人が1,500万円相当を取得する案なら、実家を取得する人が、預金600万円を取得する人へ900万円を支払う計算になります。

これは前提を置いた計算例であり、実際の事案の適正額を示すものではありません。相続人の人数と割合、遺言、生前贈与、寄与分、債務や費用の扱いが異なれば、検討する内容も変わります。

借金がある場合は、家族の内部で誰が負担するかと、金融機関等に対する責任を区別します。不動産を取得する人がローンも負うと協議書に書いただけで、ほかの人が債権者との関係でも必ず免責されるとは限りません。

税金や管理費等の立替えを代償金から差し引く案なら、対象、金額、負担の根拠を明記します。互いに別の数字を前提にしないよう、計算表には参照した資料と合意した項目を残してください。

支払資金を合意前に確認する

実家を取得したい気持ちと、代償金を払えることは別です。手元の資金、取得予定の預金、借入れの可否、今後の生活費を確認します。不動産を相続すること自体で、必要な融資が必ず受けられるわけではありません。

融資を利用する場合は、金融機関が必要とする協議書や登記、担保等の条件を確認します。先に無条件の支払義務を負い、後から融資を断られたときにどうなるかも検討してください。

分割払を提案するなら、各回の金額と支払日を具体的にし、長期間の負担に耐えられるか考えます。受取側も、自分の納税や生活の予定に合うか、途中で支払が止まる場合のリスクを確認します。

支払能力が不足する場合は、預金の配分を変える、取得者を見直す、売却して分けるなど、別案を検討します。実現できない代償金で合意するより、実際に履行できる選択肢を比較することが大切です。

登記と支払の順序を決める

協議書には、取得者、代償金、振込先、支払期限、振込費用、必要書類の交付等を記載します。登記に必要な書類をいつ渡し、金銭の支払をいつ確認するかを合わせて決めてください。

登記だけが先に済み、代償金が長く未払となる場合には、受取側の回収が問題になります。支払と手続をどのように結び付けるか、担保や強制執行に関する準備が必要かを、事案に応じて専門家へ相談します。

分割払なら、遅延した場合の残額、利息や遅延損害金、連絡方法等も検討します。広い権利放棄条項や清算条項によって、まだ受け取っていない代償金まで曖昧にならないよう、全文を確認してください。

既に支払が止まっている場合は、協議書、支払予定表、振込履歴、催促の記録を整理します。勝手に家へ入ったり財産を持ち出したりせず、請求や法的手続の方法を検討します。

税務上の計算と家族の合意を区別する

協議で決めた代償金の額と、相続税の課税価格の計算で用いる代償財産の価額は、必ず同じ扱いになるとは限りません。時価を基準に代償金を決めた場合等の計算について、国税庁が案内を示しています。[2]

現金の代わりに相続人自身が持っている不動産を渡す場合には、渡す人の所得税が問題になることがあります。財産を交換すれば現金を用意しなくてよいという理由だけで決めず、税務上の影響を確認してください。[2]

相談時には、不動産の資料、評価の根拠、遺産全体の一覧、代償金の計算表、資金調達の見通しを持参します。弁護士、税理士、登記を扱う専門家等が確認する事項を整理し、金額と実行手順が一致した合意を目指しましょう。

よくある質問

Q. 同居していた長男が必ず実家を取得しますか

A. その事情だけで決まりません。遺言、相続関係、各相続人の希望等を確認します。

Q. 実家の半額を払えば必ず公平ですか

A. 相続人の範囲、ほかの財産、相続分や調整事情によります。財産全体で計算します。

Q. 固定資産税評価額を使う決まりですか

A. 当然の決まりではありません。協議に用いる評価の基準と資料を確認します。

Q. 分割払にしてもよいですか

A. 合意内容として検討できますが、支払能力、期限、不払時の対応を具体化する必要があります。

Q. 自分の土地を代わりに渡せますか

A. 方法として検討する場合も、税務や登記の影響があります。署名前に専門家へ確認してください。

参考資料(一次資料)

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札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、相続に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

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