公正証書遺言の作成を考えたら 公証人に伝える内容と準備資料

相続

自分で全文を書くことが難しい場合や、財産の渡し方を整理して残したい場合には、公正証書遺言が選択肢になります。公証人が本人の意思を確認して作成する方法ですが、公証役場へ行けば家族関係や財産が自動的に調査され、配分まで決まるわけではありません。[1][2]

相談前に、誰に何を残したいか、対象となる財産は何か、実現する際に困る点はないかを整理すると打合せが進みます。作成手続はデジタル化も進んでいるため、古い書式だけで準備せず、利用する公証役場の案内を確認しましょう。[3]

この記事の内容

最初に本人の希望を整理する

まず、配偶者の住まいを確保したい、事業用財産を特定の子へ渡したい、世話になった人へ遺贈したいなど、実現したいことを言葉にします。法律用語に直す前に、希望の優先順位をメモするだけでも相談の材料になります。

財産を均等に分ける案でも、不動産を共有にするのか、1人が取得するのか、預金で調整するのかで将来の管理は変わります。割合の希望に加え、誰が使い続けるか、売却を想定するかを考えておきます。

家族が相談の予約や資料収集を手伝うことはあっても、遺言をするのは本人です。家族の希望を本人の意思として伝えないようにし、公証人が本人から直接確認できる状況を整えることが重要です。[2]

迷っている事項を無理に決定済みとして伝える必要はありません。「自宅は配偶者へ残したいが、預金の配分は未定」と整理すれば、検討すべき部分が明確になります。複数の案がある場合は、それぞれの目的を説明します。

家族関係と受取人の資料を準備する

本人確認資料と、相続人との続柄を示す戸籍等を準備します。日本公証人連合会は、印鑑登録証明書や官公署発行の顔写真付き身分証明書、戸籍等を例示しています。具体的に必要な組合せと有効期間は公証役場に確認してください。[4]

再婚、養子、前婚の子、先に亡くなった子などがいる場合は、その関係が分かるようにします。普段一緒に暮らしている家族だけを記載した図では、相続人の確認が不十分になることがあります。

相続人ではない個人へ遺贈する場合は、その人の氏名や住所が分かる資料を準備します。法人への寄付を考えている場合には、正式名称や法人の情報を確認し、受入れ可能な財産や連絡窓口も調べておきます。[4]

遺言に書く氏名と、戸籍や口座などの表記が異なると、後の手続で説明が必要になることがあります。旧姓、通称、住所変更などの事情も先に伝え、受取人を明確に特定できるようにしてください。

財産資料を一覧に対応させる

不動産については、登記事項証明書や固定資産評価証明書、納税通知書の課税明細などを用意します。土地と建物、私道持分、共有持分を区別し、自分が所有する範囲を確認します。住所だけを伝えて終わらせないようにしましょう。[4]

預金は通帳等で金融機関、支店、口座情報を確認します。有価証券や事業上の持分などがある場合も、その種類と保有状況を示す資料を集めます。残高が日々動く財産については、固定額と割合のどちらで定めるかも検討事項です。

借入金、保証、担保の資料も別に整理します。誰に資産を渡すかだけを決めても、債務の問題が残ることがあります。債権者との関係にまで遺言の内部的な指定がそのまま通用するとは限らないため、負担も含めて相談してください。

以前に遺言や贈与契約を作成している場合は、その資料も持参します。新しい遺言と過去の意思表示が重なり、どの内容が残るか分からなくなることを避けるためです。過去の書類を自分の判断で隠して作成を進めないことが大切です。

証人と本人の状態を確認する

公正証書遺言では、証人2人以上の立会い等の方式が必要です。証人には資格上の制限があり、財産を受け取る予定の家族を誰でも選べるわけではありません。候補者を決める前に、関係と適格性を公証役場へ確認します。[1]

未成年者や推定相続人、受遺者、その配偶者及び直系血族などは、遺言の証人になれません。知人へ依頼する場合も、秘密を知ることへの理解、当日の予定、本人確認に必要な資料を含めて調整します。[1]

本人の聴覚、発話、筆記、移動などに支障がある場合は、予約時に具体的な状態を伝えます。家族が代わりに答えればよいとは考えず、必要な意思確認の方法や支援、出張の可否を相談してください。

認知症の診断や体調の変動がある場合も、遺言をする時点の能力が問題になります。診断名だけで必ず作成できる又はできないと決めず、本人の状況と希望する内容を伝えます。資料が必要かを早めに確認すると準備の遅れを防げます。

デジタル化後の作成方法を確認する

2025年10月1日から公正証書の作成手続のデジタル化が始まりました。電子データでの作成・保存、電子サイン、電子データの受取方法などが案内されています。従来の紙の証書への署名押印だけを前提に準備しないようにします。[3]

ウェブ会議を利用する方法もありますが、希望すれば全ての遺言を必ず遠隔で作成できるわけではありません。本人確認や意思確認、所在場所の状況などを踏まえて、公証人が相当と認めることが必要です。[2][3]

公証役場へ出向くことが難しい場合には、自宅や病院、施設への出張という方法も相談できます。施設の面会や機器利用のルール、体調のよい時間帯、必要な同席者を調整し、作成方法に合った環境を確保します。[2]

電子サインが難しい事情についても事前に相談してください。本人の状態に応じた扱いがあるため、家族が署名を代行してよいと自己判断しないことが重要です。証書の受取方法と保管方法も完成前に確認します。[2]

遺留分と実行方法を最後に点検する

公正証書で作成しても、遺留分の問題が当然になくなるわけではありません。特定の人へ多く残す場合には、ほかの相続人から金銭請求がされる可能性と、受取人が支払資金を用意できるかを考えます。[1]

財産を渡す予定の人が先に亡くなる場合や、作成後に財産が変わる場合も想定します。予備的な指定、残余財産の扱い、遺言執行者の指定などを検討し、条項同士が矛盾しないようにしてください。

作成費用は財産の価額や内容、出張の有無などによって確認します。過去の記事の手数料表だけで予算を決めず、公証役場へ見積りと必要費用を尋ねます。専門家へ別途依頼する場合の費用は、公証の手数料と区別します。

完成後は、保管場所や検索の手掛かりを必要な人に伝え、家族や財産に大きな変化があったときに見直します。公正証書遺言は検認を要しませんが、死亡後の登記や金融機関での手続が何もしなくても終わるわけではありません。[2]

よくある質問

Q. 家族が本人の代わりに遺言を作れますか。

A. 家族は準備を手伝えても、遺言をするのは本人です。本人の意思を公証人が確認する必要があります。

Q. 財産を渡す子を証人にできますか。

A. 推定相続人等には証人の資格制限があります。候補者の関係を公証役場へ伝えて確認してください。

Q. 病院から出られないと作成できませんか。

A. 出張等の方法を相談できます。体調や意思確認の方法、施設の対応を事前に調整する必要があります。

Q. ウェブ会議なら必ず自宅で完結しますか。

A. 必ずではありません。利用の適否は本人確認や意思確認等の事情を踏まえて公証人が判断します。

Q. 公正証書なら遺留分を請求されませんか。

A. 公正証書でも遺留分は別の問題です。配分と支払資金への影響を含めて内容を検討してください。

参考資料(一次資料)

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