相続人ではない親族が介護したとき 特別寄与料の要件と期限

相続

義父母などの介護を長年担った人が、相続人ではないために遺産分割の話合いに参加できないことがあります。相続人以外の親族が無償で療養看護などを行い、故人の財産の維持や増加に特別に貢献した場合には、特別寄与料を請求できる可能性があります。[1][2]

この制度は介護をした人を相続人にするものではありません。また、家庭裁判所に申し立てる期間が短いため、遺産分割の終了を待ってから考えると間に合わないことがあります。対象となる人、記録の残し方、手続の期限を分けて確認しましょう。

この記事の内容

相続人の寄与分とは違う制度

相続人自身の特別な貢献は、原則として遺産分割における寄与分の問題になります。これに対し、特別寄与料は、相続人ではない親族が相続人に対して金銭の支払を求める制度です。遺産の不動産を当然に取得できるわけではありません。[1]

例えば、故人の子の配偶者が介護を担っていた場合には、その人が自分自身の貢献に基づいて請求できるかを検討します。「夫が相続人だから夫の取り分に全部加えてもらう」という説明だけでは、実際の介護者と法律上の請求主体が混ざります。

相続放棄をした人、相続欠格に当たる人、廃除によって相続権を失った人は、この制度の対象から除かれています。相続人でなくなった理由を問わず利用できる制度ではない点に注意が必要です。[1]

特別寄与料の制度は2019年7月1日以後に開始した相続が対象です。過去の介護を振り返るときは、介護をした日だけでなく、被相続人が亡くなった日を最初に確認してください。[2]

親族であることと無償の貢献を確認する

民法上の親族に当たるかを、戸籍などで確認します。同居していた、家族同様に暮らしていたという事情だけで、法律上の親族になるわけではありません。内縁の配偶者や友人による援助については、別の法律関係の検討が必要です。[1]

対象となるのは無償の療養看護その他の労務提供による特別な寄与です。家族として見舞いに行ったことや、単に同居していたことだけで支払額が決まるものではありません。本人の状態に対してどのような支援が必要だったかを説明します。

介護の対価を受け取っていた場合には、その金銭の性質を確認します。交通費や購入した日用品の実費精算と、介護労働への報酬は区別が必要です。「お金を受け取ったことがある」と一括りにせず、振込記録や家計のメモを示します。

金銭の援助だけをした場合は、この制度が定める労務提供に当たるかという問題があります。立替金の返還、貸付金、贈与など、ほかの法律関係によって整理すべき可能性もあるため、出したお金と提供した介護を分けておきましょう。

財産の維持にどうつながったかを整理する

介護の負担が大きかったという事情に加え、その労務提供が故人の財産の維持又は増加に特別に寄与したことが必要です。例えば外部の介護等に要する費用との関係を検討しますが、実際の事情に即した評価が欠かせません。[1]

介護時間に希望する時給を掛け、その全額を請求できるとは限りません。期間、方法、介護の程度、受けていたサービス、ほかの家族の関与、受けた利益などを確認して、請求の根拠を組み立てます。

記録は月ごとや状態の変化ごとに分けると整理しやすくなります。退院直後、通所サービスを利用していた時期、夜間の見守りが増えた時期などを区分し、食事、排せつ、移動、通院同行の内容を具体化します。

介護のために仕事を減らした事情も経緯として重要ですが、減った収入がそのまま特別寄与料になるとは限りません。自分が負担した損失と、故人の財産への貢献を区別して資料を用意すると、相談が進みやすくなります。

記憶を裏付ける資料を集める

介護日誌、ケアプラン、サービス利用票、通院の予定表、家族間の連絡、交通費の領収書などが手掛かりになります。後から作成した一覧表には、当時の記録に基づく箇所と記憶による箇所を区別して記載してください。

資料は自分が適法に保有するものから整理します。施設や医療機関の記録を取得できるかは、本人との関係や各機関の手続によります。請求資格や必要書類を確認し、他人のアカウントに無断で入るような集め方は避けます。

相続人から介護への感謝を伝えられたメッセージも経緯の資料になりますが、それだけで支払義務や金額が確定するわけではありません。事実を認める部分、支払を約束する部分、単なる感情表現を分けて読んでいきます。

原本はそのまま保存し、相談用にはコピーや時系列表を作成します。相手に渡す際は、無関係な第三者の情報を必要以上に含めないようにしつつ、日付や対象者など判断に必要な部分を欠落させないことが大切です。

6か月と1年の期限を先に確認する

協議が調わない場合などに家庭裁判所へ処分を求めるには、相続開始及び相続人を知った時から6か月、又は相続開始から1年という期間に注意が必要です。いずれかを過ぎてからでは遅い場合があります。[1][2]

単に請求書を送った、相続人と話合いを続けているという事情だけで、裁判所への申立期間が延びるものと考えないでください。死亡を知った日、相続人を把握した日、連絡した日、返事の内容を保存し、早い段階で期限を確認します。

遺産分割協議が長引いていても、特別寄与料の手続を後回しにできるとは限りません。「分割が終われば払う」という話があるときも、誰がいくら払うのか、書面があるか、期限への対応が別途必要かを点検します。

相続人が複数いるときは、それぞれの負担との関係を検討します。最も連絡を取りやすい1人に全額を当然に求められるわけではないため、相続人の範囲と相続分を確認して相手方を整理します。[1]

合意内容と家庭裁判所での手続

話合いができる場合には、対象となる貢献、支払う人、金額、期限、振込先を具体的に決めます。ほかに立替金などの請求があるときは、特別寄与料に含むのか別に精算するのかを明記して、二重計上を防ぎます。

合意できない場合は家庭裁判所の調停などを検討します。申立先や必要な戸籍、申立書の記載方法は裁判所の案内を確認してください。介護の説明資料と、親族関係や相続人を示す資料は役割が異なります。[2]

親族間の関係を維持したい場合でも、期限を守る対応と穏当な交渉は両立して考える必要があります。介護の苦労を全て一度に訴えるより、請求の要件、期間、金額の根拠を整理して説明する方が争点を絞れます。

申立てを検討するときは、相続人との連絡履歴も持参してください。回答待ちの期間を含めて確認すると、交渉を続ける範囲と急ぐ手続を区別できます。

よくある質問

Q. 義母を介護した嫁は必ず請求できますか。

A. 必ず認められるわけではありません。親族関係、無償の労務提供、財産の維持等への特別な寄与、相続開始時期などを確認します。

Q. 相続人である長男もこの制度を使いますか。

A. 相続人本人の貢献は通常、寄与分の問題です。実際に介護をした人と請求する人を区別してください。

Q. 話合い中なら1年を過ぎても大丈夫ですか。

A. 話合いだけで申立期間が延びるとは限りません。6か月の期間も含めて、満了前に手続を確認する必要があります。

Q. 介護の日記がないと相談できませんか。

A. 相談は可能です。予定表、家族の連絡、サービス利用の記録などから、確認できる事実と記憶による説明を整理します。

Q. 相続放棄をしてから特別寄与料を求められますか。

A. 相続放棄をした人はこの制度の対象から除かれています。ほかの契約上の請求などがあるかは別に検討します。

参考資料(一次資料)

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