相続放棄するか決められないとき 熟慮期間の伸長を検討する

相続

相続財産を調べているのに、借金の残高や不動産の状況が分からず、相続するか放棄するか決められないことがあります。原則3か月の熟慮期間が迫っている場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法を検討します。調査を続けていれば自動的に延長される制度ではありません。[1][2]

期間伸長は、判断のための時間を確保する手続です。相続放棄そのものが済むわけでも、借金を負わないことが確定するわけでもありません。何を調べているか、なぜ時間が必要か、いつまでに判断するかを整理して利用します。

この記事の内容

3か月の間に何を決めるのか

相続には、権利義務を受け継ぐ単純承認、相続によって得た財産の限度で債務を負担する限定承認、権利義務を受け継がない相続放棄という選択肢があります。民法は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という熟慮期間を定めています。[1]

財産が多いか少ないかだけでなく、債務、保証、不動産の管理負担なども判断に関係します。通帳の残高が確認できても、保証人になった契約の有無が分からないなど、調査が途中である場合があります。分からない事項を具体的に列挙してください。

「親族の話合いが終わるまで待つ」「銀行から返事があるまで何もしない」という進め方では、期間を過ぎるおそれがあります。相続人ごとに起算点を確認し、調査日程と裁判所に申し立てる日程を別に管理することが大切です。

延長が必要な理由を具体的にする

裁判所は、財産の状況を調査しても、承認するか放棄するかを期間内に決められない場合に、申立てによって期間を伸長できます。希望した人に、希望した長さの延長が無条件で与えられるわけではありません。[2]

例えば、複数の金融機関に照会中で回答がそろっていない、遠方の不動産の資料を取り寄せている、債権者が主張する債務の資料を確認している、といった事情を記載します。単に「忙しい」「まだ決めていない」と書くより、判断できない原因を明確にします。

照会した相手、依頼日、必要な資料、回答予定を表にすると、経緯を説明しやすくなります。全く調査していない部分があれば、その理由と今後の調査方法も整理してください。既に分かった財産も含め、調査の全体像を伝えます。

期限と申立先を先に確認する

申立ては、熟慮期間内に行う必要があります。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先です。申立人自身の住所や、本籍地だけを基準に送付先を決めないようにしてください。[2]

期間の起算点が不明な場合には、死亡を知った日、自分が相続人になったことを知った日、その連絡方法を整理します。先順位者の相続放棄によって相続人になった場合は、その知らせを受けた経緯も関係します。都合のよい日付を選ぶのではなく、資料に沿って確認します。

郵送を考える場合は、期限直前の発送で間に合うと思い込まず、裁判所への到達を含めた日程を確認します。不足書類の取扱いや提出方法は、申立先へ早めに照会してください。電話で相談しただけでは申立てになりません。

既に期間を過ぎた可能性がある場合は、伸長を申し立てれば当然に元へ戻るとは考えないことが大切です。相続放棄の可否を別に検討する必要があるため、届いた請求書などを持って速やかに法律相談を利用します。

申立書と添付資料を準備する

申立書には、相続関係、期間の起算点、伸長を求める期間、調査が終わらない事情などを整理して記載します。裁判所の書式と記入例を利用し、実際の事情に合わせて説明してください。記入例の理由をそのまま写すものではありません。[2][3]

一般に被相続人の住民票除票や戸籍附票、申立人の利害関係を示す資料、伸長を求める相続人の戸籍などが必要となります。相続順位によって追加の戸籍が必要になるため、家族関係に合う案内を確認します。[2]

申立前に入手できない戸籍等について、裁判所は申立後の追加提出が可能な旨を案内しています。書類が全部そろわないからと何もせず期限を過ぎるのではなく、不足資料と取得予定を伝えて提出方法を確認してください。[2]

借金の通知、金融機関への照会書、財産一覧、取寄せ中の資料の控えは、伸長理由を説明するためにも役立ちます。原本を提出するか、写しでよいかは書類に応じて確認し、自分の手元にも申立書と添付書類の控えを残します。

家族の申立てが自分にも及ぶとは限らない

同じ相続でも、誰の熟慮期間について伸長を求めるかを明確にする必要があります。兄弟の1人が申し立てたと聞いたからといって、自分の期間も当然に延びたと判断しないようにしてください。申立ての対象者を確認します。[1][2]

相続人ごとに死亡を知った時期や、先順位者の放棄を知った時期が異なる場合もあります。家族共通のカレンダーだけでなく、各自の期限と申立状況を記録すると、手続漏れを防ぎやすくなります。

限定承認を検討している場合には、共同相続人全員で行うという別の要件もあります。期間の伸長だけで家族の意思が一致するわけではありません。誰が放棄を検討し、誰が財産の承継を希望しているかも早めに確認します。[1]

申立て後も財産の取扱いに注意する

申立てをした後は、裁判所からの照会や追加資料の要求に対応します。審判書等を受け取ったら、誰について、いつまで伸長されたかを実際の書面で確認してください。申立書に書いた希望日を、そのまま認められた期限として扱わないようにします。[3]

伸長された期間も、財産を自由に処分してよい期間ではありません。遺産を売却したり自分の生活費に使ったりすると、単純承認とみなされる問題が生じることがあります。保管や保存が必要な場合も、具体的な行為を事前に相談します。[1]

調査で相続放棄を選ぶことになった場合は、延長後の期限までに別途相続放棄の申述を行います。追加の伸長が必要になりそうな場合も、期限前から検討してください。再度の伸長が必ず認められるという前提で予定を組むことは避けます。

延長後の調査予定を作る

伸長の申立てと同時に、残る調査を「依頼済み」「未依頼」「回答待ち」「確認済み」に分けます。各項目に担当者と確認日を入れ、返答がない場合に再照会する時期も決めておきます。延長の決定を受けたことで調査を止めないことが大切です。

財産の金額が確定しない場合には、確定している金額と見込み額を分けます。不動産の査定額と固定資産税の評価額、借入残高と保証債務など、性質の違う数字を混ぜて単純な差引きだけで判断しないようにしてください。

相談時には、相続関係、知った日付、財産と負債、これまで行った払戻しや処分、照会中の資料を一緒に伝えます。期間の確保と、その後にどの選択をするかの検討を並行して進めることで、期限直前の判断を避けやすくなります。

よくある質問

Q. 調査中なら3か月は自動的に延びますか

A. 自動では延びません。期間内に家庭裁判所への伸長申立てを検討します。

Q. 戸籍が全部そろわないと申し立てられませんか

A. 入手できない戸籍等は後から追加提出できる場合があります。不足資料と提出方法を裁判所へ確認します。

Q. 兄が延長したら私の期限も延びますか

A. 当然には判断できません。誰を対象とする申立てと審判なのか確認してください。

Q. 伸長されたら相続放棄は完了ですか

A. 完了しません。放棄する場合は期限までに別途相続放棄の申述が必要です。

Q. 延長中は預金を使ってもよいですか

A. 単純承認の問題が残ります。使途と行為の内容を確認し、処分の前に相談してください。

参考資料(一次資料)

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札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、相続に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

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