実家を誰が取得するか決まらず、「とりあえず兄弟で半分ずつ」にしようと考えることがあります。共有は選択肢の1つですが、後の売却、修繕、利用、費用負担について共同で判断する関係が続きます。持分を平等にすれば、すべての問題が解決するわけではありません。[1]
共有にする前には、なぜ共有を続けるのか、誰が使うのか、いつどのように解消する可能性があるのかを考えましょう。遺産分割前の共有状態と、協議で共有取得を決めた後の状態も区別して説明します。
この記事の内容
- 共有持分は部屋や土地の区画ではない
- 不動産全体の売却と持分の売却を分ける
- 管理は人数ではなく持分の割合が関係する
- 税金と維持費の負担を決める
- 賃貸や利用の変更を安易に進めない
- 次の相続で関係者が増えることを考える
- 遺産分割と共有物分割を区別して相談する
- よくある質問
共有持分は部屋や土地の区画ではない
不動産の持分を2分の1ずつ取得しても、当然に1階と2階、土地の東半分と西半分に分かれるわけではありません。共有持分は、物全体に対する割合です。特定の場所をそれぞれの単独所有にするには、別の検討と手続が必要です。[1]
例えば兄が住む実家を兄弟で共有する場合、弟が実際にどこを使えるか、兄が単独で住むことへの対価をどうするかを話し合います。持分の登記だけでは、日常の利用条件まで明らかになりません。
民法は、各共有者が持分に応じて共有物全体を使用できることや、別段の合意がない場合の持分を超える使用の対価について定めています。誰かが使っていることだけを理由に、直ちに退去や無償使用の結論が出るわけではありません。[1]
生前から同居していた人がいる場合は、それまでの利用関係も確認します。遺言、賃貸借、使用の合意、配偶者の居住に関する権利などが問題になることもあり、共有割合だけで整理しないことが大切です。
不動産全体の売却と持分の売却を分ける
共有不動産全体を任意に売却するには、原則として共有者全員の協力が必要です。2分の1を持っているから、もう1人の分も含めて売却契約を結べるわけではありません。仲介を依頼する段階から、権限と合意の範囲を確認します。[1]
一方、自分の共有持分を処分することは、不動産全体の売却とは異なります。持分が第三者へ移れば、その人との共有関係になる場合があります。家族だけで使い続けるつもりでも、将来の売却や差押え等により関係者が変わる可能性を考えておきます。
持分だけの売却では、不動産全体を売った金額に持分割合を掛けた額が必ず得られるわけではありません。利用や共有解消の負担があるため、提示額と条件を確認し、急いで契約しないようにします。
売却の意見が一致しても、最低価格、価格変更、売却期限、費用の支払、手取りの配分で争うことがあります。代表者へ任せる場合も、何を判断でき、何に全員の確認が必要かを明らかにしてください。
管理は人数ではなく持分の割合が関係する
共有物の管理に関する事項は、原則として持分の価格の過半数で決めます。共有者の頭数の過半数ではありません。2人で半分ずつの共有では、一方だけで過半数にならない点に注意が必要です。[1]
また、形状又は効用を著しく変える変更と、管理、保存ではルールが異なります。大規模な改築、通常の維持管理、損傷を防ぐ緊急措置などを全部「修繕」と呼んで同じ手続で進めないようにしてください。
保存行為は各共有者ができるとされていますが、工事名だけで分類できるものではありません。必要性、規模、物の状態への影響を確認します。緊急の場合も、写真、見積書、連絡の記録を残してください。[1]
既に共有者間の決定に基づいて使用している人へ特別な影響を及ぼす場合など、別の承諾が問題になることもあります。過半数があるから何でも実行できると判断せず、具体的な行為に応じて確認します。[1]
税金と維持費の負担を決める
固定資産税、火災保険、修繕、除雪、草刈り、管理委託等の費用を一覧にします。法律上の負担、行政や契約相手に対する支払義務、共有者間での精算を分けて整理することが大切です。
1人が請求書を受け取り立て替える場合は、資料の共有方法、請求する時期、支払期限を決めます。毎年何となく負担していると、後からどこまで請求できるか、何に使ったかで争いが生じることがあります。
民法は共有物の管理費用等について持分に応じた負担を定めていますが、具体的な費用の性質や合意を確認する必要があります。住んでいる人の個人的な光熱費と、建物全体の維持費を混ぜないようにしてください。[1]
札幌などで空き家を管理する場合は、冬季の凍結、積雪、落雪等への対応も見通しておきます。遠方の共有者がいるなら、現地へ行く担当者と、緊急時に連絡・発注できる範囲を決めておくと対応しやすくなります。
賃貸や利用の変更を安易に進めない
空いた実家を貸す場合には、共有者間の権限だけでなく、契約期間、借地借家法の適用、明渡しの見通しなどを確認します。期間が短い契約書を作れば、必ず簡単に終了できるとは限りません。
賃料を受け取る人、経費を支払う人、共有者へ報告する方法を決めます。家賃が1人の口座に入る場合でも、それだけでその人の固有の収入として自由に扱ってよいわけではありません。
共有者のうち1人が事業に使う場合や、親族へ無償で貸す場合も、使用範囲、期間、費用、終了時の原状回復等を整理します。口約束だけで長期間続けると、事情が変わったときに条件を確認しにくくなります。
売却を予定しているのに長期の利用契約を先に結ぶなど、目的が食い違わないようにします。利用の変更が他の共有者や将来の買主へ与える影響を考え、契約前に確認してください。
次の相続で関係者が増えることを考える
共有者が亡くなると、その持分について相続が起こります。兄弟2人だけだった共有が、配偶者や子を含む複数人の関係へ変わることがあります。今は意見が一致していても、同じ状態が続くとは限りません。
共有者の住所変更や判断能力の低下により、売却や管理の意思確認が難しくなる可能性もあります。連絡先を把握し、利用や費用の合意を書面で残すと、後の関係者へ説明しやすくなります。
他の共有者が不明又は所在不明の場合などには、裁判所の手続によって変更や管理を進められる制度があります。しかし、連絡がないから自分の判断でその人を除外してよいという意味ではありません。調査と法定の手続を確認します。[1][2]
共有を将来解消する方針なら、見直す時期、買い取る場合の評価方法、売却を検討する条件を話し合います。法的な拘束力や実行方法には個別の確認が必要ですが、出口を考えずに共有を始めないことが大切です。
遺産分割と共有物分割を区別して相談する
まだ遺産分割をしていない状態では、原則として遺産分割の手続が問題になります。協議で共有取得を決めた後の共有関係とは、解消のために使う手続が異なる場合があります。登記が共有というだけで判断しないようにしてください。[1]
通常の共有で分割の協議ができない場合には、共有物分割の裁判手続を検討します。現物の分割、金銭の負担による持分取得、競売などが問題になりますが、どの方法になるかは具体的な事情によります。[1]
相談には登記事項、遺言や協議書、共有者一覧、利用状況、費用の記録、売却等に関する連絡を持参します。共有を選ぶ前なら単独取得や売却案と比較し、既に共有なら管理と解消のどちらを優先するか整理しましょう。
よくある質問
Q. 持分2分の1なら家の半分を自分だけで使えますか
A. 特定の部屋が自動的に単独所有になるわけではありません。使用方法の合意等を確認します。
Q. 人数の過半数で修繕を決めますか
A. 管理では原則として持分の価格の過半数が基準です。工事が変更や保存に当たるかも確認します。
Q. 全体を売るには全員の協力が必要ですか
A. 原則として必要です。自分の持分だけの処分とは区別します。
Q. 連絡がない共有者を外して売却できますか
A. 当然にはできません。不明者等に関する裁判所の制度と要件を確認します。
Q. 共有登記があれば遺産分割は終わっていますか
A. それだけでは判断できません。登記原因、遺言、協議の有無と内容を確認します。
参考資料(一次資料)
- [1] 民法(現行条文)
- [2] 法務省 遺産分割に関する新たなルールの導入
- 資料確認日 2026年9月23日
ご相談について
札幌手稲ポプラの丘法律事務所では、相続に関するご相談を承っています。手元の資料とこれまでの経緯を基に、必要な手続と対応の順序を整理します。

