法務局の遺言書保管制度でできること 内容の有効性との違い

相続

自分で書いた遺言書を自宅に置いておくと、紛失したり、死亡後に家族が見つけられなかったりする心配があります。法務局の自筆証書遺言書保管制度は、原本と画像情報を保管し、相続開始後に関係者が内容を確認するための仕組みです。[1]

ただし、法務局が遺言の内容を代わりに考えたり、有効性を保証したりする制度ではありません。何を預けられるか、本人が行う手続、死亡後に家族が使う証明書を区別して準備することが大切です。

この記事の内容

保管の役割と内容の検討を分ける

この制度では、自筆証書遺言を法務局で保管します。自宅保管に伴う紛失や隠匿などの問題を減らし、死亡後に遺言の存在と内容を関係者へ伝えるための仕組みが設けられています。[1]

保管申請時には、自書、日付、氏名、押印などの形式面の確認が行われます。一方、財産の指定が希望どおりの法的効果を持つか、遺留分との関係はどうか、作成時に必要な能力があったかといった問題まで解決するものではありません。

法務省は、法務局では遺言書の内容に関する相談に応じられないと案内しています。配分や条項の意味に迷う場合は、申請の予約とは別に、弁護士等へ内容の相談をする必要があります。[2]

例えば「自宅は妻に任せる」とだけ書いた場合、何を承継させる趣旨かが不明確になることがあります。用紙の余白や署名が整っていても、本文の曖昧さが解消されるわけではありません。保管前に、財産と受取人を特定できるかを点検します。

預ける遺言書の方式と用紙を確認する

自筆証書遺言は、原則として本文、日付、氏名を本人が手書きし、押印します。財産目録には自書によらない方法もありますが、各ページの署名押印などが必要です。印刷した本文に署名するだけで足りると誤解しないでください。[2][3]

保管制度には、民法上の方式に加えて用紙のルールがあります。A4サイズ、片面記載、所定の余白、複数枚の場合のページ番号などを確認します。本文だけでなく財産目録についても、保管に適した体裁にする必要があります。[2]

余白へページ番号や訂正の文字がはみ出すと、書き直しが必要になることがあります。法務省の用紙例を使う場合でも、印刷時の拡大縮小によって余白が変わらないかを確認してください。文字が薄いコピーも作り直す方が確実です。

遺言書は封筒に封をしたまま預けるものではありません。複数枚をとじる方法等にも案内があるため、自己流で製本する前に最新の注意事項を読みます。提出直前に手を加える場合は、訂正の方式にも注意が必要です。[2]

申請するのは遺言者本人

保管申請は遺言者本人が行います。家族や専門家が代理人として申請したり、遺言書を郵送して預けたりすることはできません。本人が窓口へ行けるかどうかは、制度を選ぶ段階で確認しておきます。[4]

申請先は、住所、本籍、所有不動産の所在地などとの関係で確認します。全国のどの窓口でも同じように最初の申請ができると考えず、管轄の遺言書保管所と予約方法を法務省の案内で調べてください。[4]

本人確認資料、申請書、必要な添付書類、手数料を準備します。家族が準備を手伝う場合も、本人が書いた完成版と検討途中の原稿を取り違えないようにしてください。持参物の不足で再訪問にならないよう、予約先に確認します。

一部の窓口では書類の形式面の事前チェック等の取組が案内されていますが、それを利用すれば本人の来庁や内容の検討が不要になるわけではありません。実施範囲と利用方法は申請する保管所の現行案内に従います。[4]

保管後の変更と撤回を管理する

保管した後に本人の住所や氏名などが変わった場合は、変更の届出が必要になります。受遺者や遺言執行者、通知対象者に関する変更も確認してください。連絡先を古いままにすると、死亡後の通知や確認が進みにくくなるおそれがあります。[4]

配分を変えたい場合、住所変更の届出を出すだけで遺言本文が書き換わるわけではありません。保管申請を撤回して返還を受ける、新しい遺言を作成して追加保管するなど、内容変更に応じた手続を検討します。[4]

保管申請の撤回と、民法上の遺言そのものの撤回は区別が必要です。法務局から返してもらったという事実だけで、その遺言の内容が全て無効になったと考えないでください。新旧の遺言の関係を含めて確認します。[3]

作成後に不動産を売却した、受取人が先に亡くなった、家族構成が変わったときは、内容を見直す機会になります。保管証だけを更新すれば十分という問題ではなく、本人の現在の希望に遺言が合っているかを点検します。

死亡後は証明書の種類を使い分ける

遺言書保管事実証明書は、遺言書が保管されているか等を確認するための証明書です。一方、遺言書情報証明書には遺言書の画像情報が印刷され、内容を確認し、原本に代わって各種手続で使用します。[5]

相続人等の手続は、遺言者が亡くなった後に行います。将来相続する予定だからという理由で、生前に自由に内容を見られる制度ではありません。誰がどの証明書を請求できるかと、本人確認や相続関係の書類を確認してください。[5]

保管証や通知が手元にあっても、それだけで全ての証明書を取得できるとは限りません。必要書類は請求者の立場や通知の種類によって異なります。提出先、原本の返却、受取方法もあわせて調べると手続を管理しやすくなります。

遺言書情報証明書を取得したり閲覧したりした場合には、ほかの関係相続人等への通知が行われる仕組みがあります。自分だけが内容を知り、ほかの相続人へ制度上知らせずに手続を完結できると考えないことが大切です。[5]

検認が不要でも相続手続は残る

この制度で保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認は不要です。自宅で見つかった通常の自筆証書遺言とは、この点が異なります。ただし、検認不要ということと、内容に争いが起きないことは別です。[1][5]

不動産の名義変更、預金の払戻し、税務申告等は、それぞれの窓口で必要な手続を行います。法務局へ保管した時点で、死亡後の登記や口座名義が自動的に変更されるわけではありません。

家族には、必要に応じて保管したことと保管番号等の手掛かりを伝えます。通知制度も確認しつつ、どのような書類を探せばよいか分かる状態にしておくと、死亡後の対応が進めやすくなります。暗証番号など不要な情報まで遺言へ書き込む必要はありません。

制度の利用を相談する際は、完成前の原稿、財産一覧、家族関係、本人の来庁の可否をまとめます。自筆証書の保管制度と公正証書遺言を、費用だけでなく作成の負担、意思確認、将来の実行方法から比較しましょう。

よくある質問

Q. 法務局が遺言の配分を考えてくれますか。

A. 内容に関する相談を行う制度ではありません。誰へ何を残すかや法的効果は、別途検討する必要があります。

Q. 子どもが代理で預けに行けますか。

A. 保管申請は本人が行います。代理人による申請や郵送による保管申請はできません。

Q. 申請を撤回すると遺言も消えますか。

A. 保管申請の撤回と遺言の撤回は別です。返還後の遺言と新しく作る遺言の関係を確認してください。

Q. 保管事実証明書で遺言の全文が分かりますか。

A. 内容の確認には遺言書情報証明書や閲覧等を利用します。証明書の目的と必要書類を区別してください。

Q. 死亡後に家庭裁判所へ検認を申し立てますか。

A. 制度で保管された遺言は検認不要です。ただし、登記や金融機関の相続手続等は別に進める必要があります。

参考資料(一次資料)

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