利用者の情報を家族やSNSへ出してよいか 介護事業者の同意と共有範囲

介護事業者向け

利用者の娘から電話で様子を聞かれた、行事の写真をホームページに載せたい、職員同士でスマートフォンに記録を送った。介護の現場では情報を使う目的が日常的でも、その相手と方法を確かめなければ、本人が望まない共有につながる。

個人情報の取扱いは、同意書を一枚もらえばすべて解決するものではない。介護の提供に必要な共有、家族への説明、広報への利用を分け、本人の意向と提供先を確認する。以下では個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンス等を踏まえて、現場の判断手順を整理する。[1]

この記事の内容

1 何のために誰へ伝えるのかを先に決める

最初に確認するのは、情報を使う目的である。ケアの調整に必要な情報を関係職種へ伝える場面と、施設の活動を紹介するために写真を公開する場面では、必要性も見てもらう相手も違う。契約時に説明した利用目的を確認し、目的に必要な範囲へ絞る。

「施設のためになる」「家族から頼まれた」という事情だけで範囲を広げない。氏名がなくても、顔、居室、珍しい出来事、日時などを組み合わせて本人を識別できる場合がある。名前を消したことだけで匿名化が済んだと考えるのは危険である。

実務では、情報の種類、目的、相手、本人の意向、共有した日時を一つの記録にすると確認しやすい。毎回長い書類を作るより、よくある共有についてルールを決め、通常と違う依頼を管理者へ上げる仕組みにする方が運用しやすい。

2 家族というだけで無制限に説明しない

ガイダンスは、本人以外への病状説明等について、説明する家族等の対象者をあらかじめ確認し、同意を得ることが望ましいとする。家族間で関係が悪い場合や、本人が特定の人への説明を望まない場合もある。緊急連絡先の登録と、すべての記録を受け取る権限は同じではない。[1]

電話では、相手の氏名だけで本人の家族と決めない。登録済みの連絡方法との照合や折り返しなど、情報の重要性に応じた確認方法を決める。施設職員の異動や退職後も同じように情報が渡ることがないよう、連絡先一覧は更新する。

本人の同意が困難で、生命・身体等の保護に必要な例外が問題になることもある。ただし「認知症だから何でも家族に話せる」と一律に扱わず、本人の状態、緊急性、提供する情報の必要性を確認する。本人への説明が可能になれば、何を誰へ伝えたかを共有することも大切である。

3 担当者会議では利用者情報と家族情報を区別する

介護サービスの担当者会議等で利用者や家族の個人情報を用いる場合には、指定基準に基づく文書同意に留意する必要がある。利用者が同意したから、その家族の病歴や勤務事情を何でも共有できるとは限らない。ガイダンスも利用者と家族の同意を区別している。[1]

会議の資料には、支援に必要な内容を記載する。家族から聞いた事情が本人の介護にどう関係するのかを考え、単なる噂や評価を持ち込まない。配布先、回収や保管、オンライン会議の参加者確認も、紙の同意書と同じ程度に重要である。

例えば、家族が平日の連絡を受けにくい事情があるなら、必要なのは連絡可能な時間帯かもしれない。勤務先の内部事情まで共有する必要があるとは限らない。支援に必要な情報へ言い換えられないかを検討するだけでも、不要な拡散を減らせる。

4 写真の広報利用は掲載場所ごとに説明する

個人情報保護委員会のQ&Aは、本人を識別できる写真について、ホームページや機関誌への掲載、施設内展示で第三者の閲覧に供する際にも本人の同意が必要と説明している。施設内だから同意不要という扱いにはしない。[2]

同意を求めるときは、撮影と公開を分け、掲載先、氏名の表示、利用期間、撤回の相談方法を分かりやすく示す。広報への同意をサービス利用の当然の条件にせず、同意しない人が写真に写り込んだ場合の扱いも決める。集合写真は全員の確認が必要になる。

SNSでは、一度公開した画像が転載され、完全に回収できないこともある。公開後に削除を求められた場合、施設が管理する投稿を速やかに確認するとともに、対応できる範囲を説明する。紙面の掲示への同意を、公開範囲の広いSNS投稿まで自動的に拡張しない。

5 職員の私物端末とグループチャットを点検する

連絡のために便利でも、私物のスマートフォンへ利用者の記録や写真を送れば、紛失、誤送信、退職後の残存といった問題が生じる。施設として使用できる端末やサービスを定め、管理されていない個人アカウントへ情報が分散しないようにする。

職員が閲覧できる範囲も、役職だけで決めず、担当業務に必要かで考える。異動、休職、退職時にはアカウントやグループへの参加状態を見直す。共用IDの使い回しでは、誰が何を閲覧・送信したか分からなくなるため、可能な限り個別に管理する。

誤送信に気付いた場合は、送信先への削除依頼だけで終わらせない。何の情報を何人分、どこへ送ったかを確認し、拡大を防ぎ、管理者へ報告する。法令上の報告・本人通知の対象かは内容により異なるため、医療・介護の要配慮個人情報を含む事案は早い段階で検討する。[1]

広報担当が交代する場面

例えば、以前の担当者が撮影した写真を新しい担当者がSNSへ再掲載するとき、保存フォルダに写真があるだけでは利用の根拠にならない。同意を受けた掲載先や期間、本人の意向の変更を確認する。広報用の素材には、確認した同意の記録へたどれる管理番号等を付けておくとよい。

投稿文にも注意が必要である。写真に氏名を載せなくても、「先週入所した元校長先生」などの記述を添えると、本人が分かる場合がある。日付や居住地域、健康状態など、記事の目的に不要な情報を加えない。投稿前の確認者を決め、急いでいるときほど確認が抜けない工程にする。

本人が退所した後の写真の扱いも、あらかじめ説明しておきたい。削除の相談を受けた際は、どのページや投稿に掲載したかを調べられる台帳が役立つ。広報担当者の個人端末だけに掲載履歴があると、異動や退職で対応が止まりかねない。

介護記録を送る相手を間違えた場合と、写真を誤って公開した場合では、拡散の範囲や回収の方法が違う。事故時の手順は一律の削除依頼だけにせず、公開停止、閲覧状況の確認、関係者への連絡などを状況に合わせて選ぶ。対応した日時と結果を残し、管理者が途中経過を追えるようにする。

6 同意の管理と現場の運用をそろえる

受付で同意書を保管していても、広報担当がその内容を確認できなければ事故は防げない。「撮影可・施設内掲示可・ウェブ掲載不可」などの違いを、必要な担当者が分かる形で管理する。同意の変更があったときは、古い一覧が残らないようにする。

  • 家族への説明先と本人の意向を記録している
  • 担当者会議の文書同意を利用者・家族ごとに確認している
  • 写真の撮影、施設内掲示、ウェブ掲載を区別している
  • 私物端末や退職者アカウントへ情報が残っていない
  • 誤送信等を報告する窓口と初動担当が決まっている

よくある質問

Q. 家族なら電話で詳しく説明してよいですか

A. 本人の意向、説明対象者、相手の確認、説明する必要性を確かめます。家族という申告だけで無制限に提供しません。

Q. 顔にぼかしを入れれば同意はいりませんか

A. ほかの情報と合わせて個人を識別できる場合があります。ぼかしだけで判断せず、画像全体と掲載文を確認します。

Q. 施設の廊下への写真展示にも同意が必要ですか

A. 個人情報保護委員会のQ&Aは、第三者の閲覧に供する施設内展示についても本人の同意が必要と説明しています。

Q. 家族の勤務先や病気も担当者会議で共有できますか

A. 介護に必要な範囲と家族本人の同意等を確認します。利用者の同意だけで家族情報の共有を済ませないようにします。

Q. 誤送信した相手が削除したと言えば対応終了ですか

A. 内容、範囲、二次的な利用の可能性等を確認し、記録と再発防止を行います。法定の報告や本人通知の要否も別に検討します。

参考資料(一次資料)

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個人情報の同意書、写真掲載ルール、家族への説明先を点検します。誤送信等が起きた場合も、状況に応じた初動と報告の要否をご相談ください。

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