仲介会社自身が損害賠償を請求された場合は、まず「誰が、どの行為を問題にし、いくらを請求しているか」を整理します。売主が負う契約不適合責任と、仲介会社の調査・説明等に関する責任は別の問題です。請求を受けたことだけで責任が確定するわけではありません。[1・2]
札幌の不動産会社で、顧客から通知書やメールが届いたとき、担当者だけで「当社は一切関係ありません」「全額を負担します」と回答する前に、契約と資料を確認する必要があります。初動では、事実関係と法的な評価を混ぜないことが重要です。
この記事の内容
- 1.売主の責任と、仲介会社の責任を分ける
- 2.請求書を「行為・根拠・損害・期限」に分解する
- 3.重要事項説明書だけでなく、原資料を保存する
- 4.会社としての回答窓口を決める
- 5.保険と、他の関係者との責任分担を確認する
- 6.相談時には「不利な事情」も最初に共有する
- よくある質問
1.売主の責任と、仲介会社の責任を分ける
物件に不具合が見つかった場合、売主に対しては売買契約の内容との適合性が問題になります。一方、仲介会社については、媒介契約上の義務、具体的な調査・説明の内容、相手方への不法行為責任等を検討します。仲介したというだけで、当然に売主と同じ立場の責任を負うわけではありません。[1]
反対に、「当社は売主ではないから、どのような説明をしても責任はない」ということにもなりません。宅建業法上の義務と、民法上の債務不履行・不法行為等の問題を分けて確認します。[1・2]
自社がその取引の売主なのか、売主とは別の立場で媒介しているのかを、取引ごとに確認します。同一グループの別法人が売主である場合も、法人と業務分担を区別してください。広告上の表示、契約書、顧客への説明が一致しているかを調べます。
2.請求書を「行為・根拠・損害・期限」に分解する
届いた通知は、感情的な表現の強さではなく、具体的な内容を読みます。どの情報を説明しなかったというのか、説明が誤っていたというのか、どの費用の負担を求められているのかを分けます。
民法上の損害賠償では、問題となる義務違反等と損害の関係、請求できる損害の範囲が重要です。顧客が提示した工事費や減価額が、そのまま仲介会社の賠償額になるとは限りません。見積書の対象工事、既存不具合との関係、改善・性能向上部分の有無などを確認します。[1]
また、相手が任意に指定した回答期限と、裁判所が定めた提出期限・期日や法定の期限は区別します。裁判所から書類が届いたときは、社内調査の完了を待たず、書類全体と受領日を弁護士に伝えてください。
3.重要事項説明書だけでなく、原資料を保存する
媒介契約書、売買契約書、重要事項説明書、物件状況報告書、設備表、調査資料、広告、メール・メッセージ、社内記録を確保します。電子契約の場合は、締結済み文書だけでなく、確認できる範囲で交付・締結の履歴も保存します。
重要なのは、後から整えた説明資料だけに置き換えないことです。当時の広告、修正前の資料、担当者にとって不利に見える連絡も、元の状態で保全します。事実確認のために追記する場合は、後日の追記であることと作成日を明示します。
重要事項説明書に顧客の署名があることだけで、具体的な説明の内容・適切さがすべて確定するわけではありません。何を、いつ、どの資料に基づいて伝えたかを確認する必要があります。[1・2・3]
4.会社としての回答窓口を決める
担当者、責任者、経営者が別々に返答すると、事実認識や約束が食い違うおそれがあります。実務上は、回答窓口を一本化し、確認済みの事実、調査中の事項、今後の連絡予定を整理します。
顧客の説明を聞くことと、法的な責任や請求額を認めることは区別します。他方で、証拠を確認せずに全面否定することや、相手の連絡を無視して問題が解消したと扱うことも避けたい対応です。
建物の安全に関わる問題がある場合には、責任の所在が確定するまで危険を放置せず、所有者・管理者等と連絡し、必要な安全確認や応急措置を検討します。その際も、費用負担の法的評価と緊急対応の内容を記録しておきます。
5.保険と、他の関係者との責任分担を確認する
賠償責任に関する保険へ加入している場合は、対象事故かどうかだけでなく、事故通知の時期、保険会社との協議、示談についての事前承認の要否を、実際の約款や窓口で確認します。保険に加入していることだけで、あらゆる請求が補償されるとは限りません。
売主、別の仲介会社、調査会社、施工業者等の関与がある場合にも、まず自社と相手方の法律関係を確定します。他社の責任がありそうだから自社の回答を止めるのではなく、自社の義務と、他社への請求・協議を分けて考えます。[1]
関係者と共同で弁護士に相談する前には、利益が対立していないかも確認が必要です。同じ取引の関係者であることと、同じ立場で代理を受けられることは一致しません。[4]
6.相談時には「不利な事情」も最初に共有する
弁護士には、請求書だけでなく、原資料、経過表、既に相手へ伝えた内容、会社としての希望を渡します。顧客への説明が不十分だった可能性、社内確認を省略した可能性なども、確認できた範囲で共有してください。
法律上の見通しを検討するためには、都合のよい部分だけでなく、反対方向の資料も必要です。「まだ分からない」と書ける項目は、推測で断定せず未確認事項として残します。相談の準備は、不動産会社が弁護士に相談するときの必要資料でも整理しています。
よくある質問
Q. 売主ではないので、損害賠償を請求されても無関係ですか。
A. 売主の契約不適合責任とは区別されますが、仲介会社自身の調査・説明等に関する義務違反が問題になることはあります。請求の根拠と具体的な行為を確認します。[1・2]
Q. 重要事項説明書に署名があれば、必ず責任を免れますか。
A. 署名だけで一律に判断できません。説明事項、説明内容、調査資料、当時のやり取りを確認します。[1・2・3]
Q. 保険会社に連絡したので、顧客への対応は止めてよいですか。
A. 保険の手続と顧客への対応は別に管理する必要があります。保険会社の指示や約款を確認し、回答窓口、期限、安全上の対応を整理してください。
札幌の不動産会社の方へ
自社が責任を問われているときほど、担当者の記憶だけで返答せず、原資料と契約関係に立ち戻ることが重要です。会社側の対応方針については、不動産事業者向けの法律支援をご確認ください。
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参考法令・公表資料
- 民法。本記事の参照箇所:415・416・559・562条以下・644・656・709条等。
- 宅地建物取引業法(35・37・39・40・46・78条等)。本記事の参照箇所:35・37条等。
- 国土交通省「標準媒介契約約款」(令和6年4月1日施行版)。本記事の参照箇所:調査・説明等の業務、書面交付等の条項。
- 弁護士法(23・25・72条等)。本記事の参照箇所:25条等。
本記事は一般的な法制度と実務上の留意点を説明するものです。個別の対応は、契約内容、契約時期、事実関係、適用される法令等によって異なります。
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