管理会社の顧問弁護士はオーナーの代理もできる?札幌の不動産業者が知っておきたい依頼者と利益相反

不動産事業者向け

この記事の内容

顧問先と、その顧問先のお客様は別の当事者

管理会社が顧問弁護士に相談するとき、問題となっている物件はオーナーの所有物であることが多いでしょう。しかし、管理会社の業務上の相談と、オーナーの賃料請求・明渡請求を代理することは、同じではありません。

管理会社との顧問契約があるだけで、オーナー個人の代理人にもなるわけではありません。 誰から何を依頼されるのか、代理権があるか、関係者の利益が対立しないかを確認して、業務の範囲を決めます。費用を払う人、連絡窓口、依頼者も、必ずしも一致しません。[1・2・3]

1.まず三つの立場を分ける

相談の入口では、依頼者、連絡窓口、費用負担者を分けます。管理会社の担当者が資料を集め、会社が費用の支払を取りまとめる運用であっても、それだけで会社がオーナーの権利を処分できるわけではありません。代理による法律行為には、その範囲に応じた権限の確認が必要です。[3]

依頼者を管理会社とするなら、管理委託契約上の義務、自社の損害賠償リスク、社内対応などが相談の中心になります。依頼者をオーナーとするなら、オーナー自身が有する請求権や、賃貸借を終了させる方針などが対象になります。

管理会社が単なる窓口なのか、委任を取り次ぐ権限を持つのか、一定の判断を行う代理権まであるのかを区別してください。業務上の便宜のための窓口指定を、無制限の代理権として扱わないことが大切です。

2.顧問相談と個別事件の代理は、契約の範囲を確認する

顧問契約の内容は一様ではありません。相談、書類確認、交渉、訴訟等のどこまでを含めるか、対象となる法人や関係者、費用の扱いは、契約で確認します。『不動産の顧問だから、すべてのオーナーの訴訟も含まれる』という理解はできません。[2・3]

また、管理会社に対して適法な業務範囲を助言することと、管理会社がオーナーに代わって紛争交渉を行うことは別です。管理契約に広い業務名目を記載すれば、弁護士法72条等の問題を回避できるわけではありません。紛争化した賃料や明渡し条件について、誰が交渉するかを整理する必要があります。[1]

オーナーの事件を弁護士が受ける場合には、受任可否を確認したうえで、依頼する業務、意思決定者、費用、管理会社との連絡方法を明確にします。案件の窓口を一本化しても、本人の意思確認が不要になるわけではありません。

3.管理会社とオーナーの利益が一致しない場面がある

不動産の管理では、オーナーが管理会社の対応に問題があったと主張する場面があります。滞納への初動、修繕手配、説明内容、預り金の処理などについて、両者の責任が争われると、同じ弁護士が双方の立場を同時に扱えるかが問題になります。

例えば、オーナーにとっては管理会社への請求を検討する必要がある一方、管理会社にとっては自社の責任を争う必要がある場合、求める対応が異なります。

弁護士法25条、弁護士職務基本規程27条・28条は、職務を行えない事件や利益相反について定めています。規定ごとに禁止の内容や同意に関する例外が異なるため、『双方が了承すれば、どのような対立でも同じ弁護士でよい』とはいえません。[1・2]

4.一緒に依頼する場合も、途中で対立する可能性を検討する

管理会社とオーナーが同じ方向の対応を求め、複数の依頼者として受任することが検討される場面もあります。複数依頼者であること自体を、常に禁止と扱うわけではありません。ただし、受任可否、将来の利害対立、情報共有、方針決定の方法を確認する必要があります。[1・2]

弁護士職務基本規程32条は、同じ事件に複数の依頼者がいて利益相反のおそれがある場合、辞任の可能性その他の不利益について説明することを定めています。最初に方向が一致していても、責任の配分や和解条件を巡って対立することがあるためです。[2]

対立が具体化した際は、誰の代理を続けられるか、辞任や別の弁護士への依頼が必要かを、その時点の事情と適用規定に照らして判断します。『先に相談した会社の意向だけで、他の依頼者の方針も決める』という運用にはできません。

5.情報を共有する範囲も、依頼関係に合わせる

弁護士には職務上知り得た秘密の保持義務があります。管理会社の顧問だから、オーナー本人から聞いた内容を当然にすべて会社へ共有できるというわけではありません。反対に、管理会社の内部情報を、紹介したオーナーへ無条件に提供することも避ける必要があります。[1・2]

相談前には、誰の情報を、誰のために、どの範囲で提供するかを整理します。共通のメール宛先を使う場合も、関係者全員を常に同報すればよいわけではありません。特に責任の対立が疑われる場面では、共有範囲を先に確認することが重要です。

この整理は、現場の連絡を止めるためではありません。管理会社が事実確認や必要書類の準備を進めつつ、法律上の判断や交渉を誰が担当するかを明確にするためです。

よくある質問

Q. 管理会社が費用を払えば、オーナーの事件も会社の依頼になりますか。

A. 費用負担だけでは決まりません。誰を依頼者として、どの業務を受任するのかを確認します。オーナーの権利を行使・処分する場合には、その意思と必要な代理権を別途確認します。[2・3]

Q. オーナーから同意書をもらえば、利益相反は解消しますか。

A. 必ず解消するとはいえません。どの禁止規定が適用され、同意による例外が認められるか、誰の同意が必要かを確認します。同意書という形式だけで一律に判断することはできません。[1・2]

Q. 顧問弁護士に、オーナーからの相談を紹介してもよいですか。

A. 紹介・取次ぎ自体と、事件の受任は別です。先に当事者や相談の概要を伝え、受任可否と連絡方法を確認します。詳細な秘密情報を送る範囲や、会社の顧問契約とは別の費用が生じるかも確認してください。[1・2]

札幌で不動産会社の顧問弁護士を検討する際に

顧問契約では、自社の相談範囲に加え、管理物件のオーナーの事件をどのように取り次ぐかも確認しておくと、トラブル発生時の混乱を減らせます。対応内容や相談方法は、不動産事業者向けの法律支援をご確認ください。

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参考法令・公表資料

  1. 弁護士法(23・25・72条等)。本記事の参照箇所:23・25・72条等。
  2. 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(公式日英併記資料)。本記事の参照箇所:27・28・29・32条等。
  3. 民法。本記事の参照箇所:99・643条以下等。

本記事は一般的な法制度と実務上の留意点を説明するものです。個別の対応は、契約内容、契約時期、事実関係、適用される法令等によって異なります。

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