民泊の届出があることと、賃貸借契約上その利用が許されていることは別です。無断転貸や無断の宿泊営業が疑われるときは、実際の利用状況、契約の使用目的、貸主の承諾の有無を確認した上で、契約解除等の対応を検討します。[1・3]
札幌の管理物件で、旅行者らしい出入りや宿泊サイトへの掲載を発見しても、その情報だけで直ちに結論を出すのは避けたいところです。物件の特定、契約関係、届出関係の三つを分けて調べることで、誤認によるトラブルを防ぎやすくなります。
この記事の内容
- 1.最初に「誰が、どの権限で使っているか」を確認する
- 2.行政の届出と、貸主の承諾を取り違えない
- 3.広告は保存するが、それだけで違反を確定しない
- 4.無断転貸があれば、必ず解除できるのか
- 5.管理会社が先に確認する実務上の順序
- 6.承諾する場合にも、範囲を曖昧にしない
- よくある質問
1.最初に「誰が、どの権限で使っているか」を確認する
賃貸借契約の名義人、実際の使用者、宿泊サービスの運営者が一致しているかを確認します。あわせて、転貸禁止条項、居住専用等の使用目的、同居人・入居者の届出条項、管理規約等を読みます。
民法612条は、貸主の承諾のない賃借権の譲渡・転貸を制限し、違反して第三者に使用収益させた場合の解除を定めています。他方、第三者の出入りがあれば常に転貸であるわけではなく、単なる訪問、同居、宿泊サービスなど、利用の実態を踏まえる必要があります。[1]
宿泊サービスについても、事業の形態を見ずに、すべてを同じ法律上の転貸と決めつけることはできません。転貸の該当性とは別に、契約上の使用目的に反していないか、営業利用について必要な承諾があるかを検討します。[1]
2.行政の届出と、貸主の承諾を取り違えない
札幌市の民泊に関する公式ページには、民泊の手引きやチェックリストのほか、賃貸人による承諾書、賃貸人・転貸人による承諾書の様式が掲載されています。市の手引き・条例等を確認する窓口として利用できます。[3]
ただし、届出番号が掲載されていることだけで、当該物件について有効な承諾が存在することや、承諾範囲内の営業であることまで判断することはできません。契約書、承諾書、変更合意等を別途確認します。
反対に、貸主が承諾したから、行政上の届出・許可や条例上の制限が不要になるわけでもありません。どの制度に基づく宿泊営業なのかを特定し、所在地と営業形態に応じて関係窓口へ確認します。札幌市独自の制限についても、一般的な解説だけで判断せず、市の最新の手引きや告示を確認してください。[3]
3.広告は保存するが、それだけで違反を確定しない
実務上は、宿泊サイトの掲載ページ、URL、取得日時、掲載写真、紹介文、料金表示等を保存します。似た内装や周辺写真だけで自社の管理物件と断定せず、部屋の特定につながる客観的な情報を確認します。
入居者から寄せられた目撃情報は、管理会社自身が確認した事実と分けます。共用部分の状況や苦情履歴を整理する場合も、私生活に関わる情報を必要以上に集めたり、関係のない入居者へ広めたりしないようにします。
確認のためであっても、無断で室内へ入る、勝手に鍵を交換する、宿泊者の所持品を処分するという対応は避けます。証拠収集と、占有を排除する行為は別です。
4.無断転貸があれば、必ず解除できるのか
民法612条2項の解除についても、判例上、貸主に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除できないとされています。無断という一点のみで、例外を一切検討せずに結論を出すことはできません。[1・2]
そのため、承諾の経過、実際の利用、契約上の使用目的、貸主への影響、指摘後の対応等を整理します。貸主や以前の担当者が承諾していなかったか、承諾が特定の期間・相手・用途に限定されていなかったかも確認します。
同条に基づく無断転貸の解除と、その他の契約違反を理由とする民法541条・542条の解除は、法的な構成が同じとは限りません。すべての事案で一定回数の警告が必要としたり、すべて無催告で処理できるとしたりせず、解除の根拠ごとに通知の内容を検討します。[1]
5.管理会社が先に確認する実務上の順序
まず、安全上の問題や周辺への被害の有無を確認し、物件・部屋・関係者を特定します。次に、賃貸借契約書、承諾関係の文書、募集時のやり取り、管理規約等を集めます。その上で、本人に事実関係と根拠資料の説明を求め、貸主へ報告します。
使用中止、契約解除、明渡しのどこまでを求めるかが対立している場合には、管理会社が通常の管理業務として行う範囲を確認してください。貸主のために紛争の代理交渉を行う場面では、弁護士法72条との関係が問題になります。[4]
また、行政窓口への相談と、契約解除や明渡し請求は役割が違います。市へ相談したことだけで賃貸借が終了するわけではなく、私法上の手続は別に検討します。[1・3]
6.承諾する場合にも、範囲を曖昧にしない
事業として宿泊利用を認める方針の場合には、誰のどの利用を、どの期間、どの条件で認めるのかを具体化することを勧めます。苦情窓口、共用部分の使用、鍵の管理、設備の変更、契約終了時の原状回復等を協議します。
「民泊可」と短く記載するだけでは、再転貸まで認めるのか、運営者の交代を認めるのかが不明確になることがあります。行政手続の要件とは別に、所有者・賃借人・管理会社それぞれの役割が分かる契約にすることが重要です。
よくある質問
Q. 届出番号があれば、管理会社は何も言えませんか。
A. 届出と契約上の承諾は別です。賃貸借契約の内容、貸主の承諾、実際の使用方法を確認します。管理会社がどの範囲で対応できるかも管理委託契約等によります。[1・3]
Q. 無断転貸が分かれば、その日のうちに鍵を交換できますか。
A. 解除の可否と、占有を排除する方法は別の問題です。無断転貸だけで常に解除できるとも限らず、適切な法的手続を検討する必要があります。[1・2]
Q. 宿泊サイトから掲載が消えれば、解決したと考えてよいですか。
A. 掲載が消えたことと、実際の使用が終了したことは同じではありません。利用状況を確認し、契約関係をどう扱うかを整理します。過去の行為の評価も、掲載削除だけで自動的に決まるものではありません。[2]
札幌の管理会社の方へ
無断の宿泊利用が疑われる場合は、広告の保存と契約書の確認から始め、届出の有無だけで結論を出さないことが重要です。通知や契約条項の検討については、不動産事業者向けの法律支援をご確認ください。
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参考法令・公表資料
- 民法。本記事の参照箇所:541・542・612条等。
- 最高裁判所第三小法廷判決(無断転貸終了後の解除に関する判決本文)。本記事の参照箇所:背信性の例外と、無断転貸終了後の解除。
- 札幌市「民泊を始める方へ」(手引き・承諾書様式等)。本記事の参照箇所:手引き・賃貸人承諾書・賃貸人及び転貸人承諾書。
- 弁護士法(23・25・72条等)。本記事の参照箇所:72条。
本記事は一般的な法制度と実務上の留意点を説明するものです。個別の対応は、契約内容、契約時期、事実関係、適用される法令等によって異なります。
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