採用は「人を増やすイベント」やのに、同時に一番トラブルを生みやすい法務イベントでもあります。薬局は特に人手不足で採用が焦りがちで、焦りが内定取消・試用期間・条件変更で爆発しやすいんです。
この記事では、薬局経営者が最低限押さえるべきポイントを、やっていい手順としてまとめます。
1. まず前提:内定=原則「労働契約」
一般に、採用通知(内定通知)が出ていて、本人が承諾している場合、法律上は労働契約が成立している扱いになりやすいです。つまり「やっぱやーめた」が簡単に通りません。
内定取消は感覚的には「採用の取り消し」ですが、実務では解雇に近いレベルで慎重さが求められます。軽い理由(気が変わった、別候補が見つかった、忙しくなった等)では危険です。
2. 内定取消が問題になりやすい薬局あるある
- 応募者が複数内定を持っていて、こちらが返事を急がせた
- 採用後に「思ったより給与が高い」「シフトが合わない」と言い出した
- 面接で口頭で条件を言ってしまい、後から引っ込めた
- 「試用期間だから、合わなければ即終了できる」と誤解している
揉めると、労基・ユニオン・弁護士経由でコストが跳ね上がります。
3. 内定取消を検討する前の“安全な”3ステップ
Step1:内定通知書・労働条件通知書の内容を確認
まず書面を見てください。「いつから」「どんな条件で」採用すると書いてあるか。ここが戦場です。
- 入社日
- 職種(薬剤師・事務・管理薬剤師など)
- 勤務地
- 賃金(基本給・手当・固定残業代の有無)
- 労働時間・休憩・休日
- 試用期間の有無と条件
- 取消条件(健康診断・資格確認等)が書かれているか
Step2:取消理由を“客観的資料”で固める
取消理由が「気分」だと負けやすいです。薬局で比較的まだ立ちやすいのは、例えば次のような事情です。
- 資格要件を満たしていない(薬剤師免許未確認など)
- 経歴詐称が重大(前職の懲戒解雇歴を隠していた等)
- 業務遂行が困難な事情が明確(ただし慎重)
- 重大な信用失墜行為が判明(これも慎重)
※ここはケースで結論が変わります。取消を確定させる前に、リスク判断を入れるのが安全です。
Step3:代替案を検討する(いきなり取消に飛ばない)
- 入社日の延期(双方合意)
- まず短時間から開始(双方合意)
- 業務内容の調整(双方合意)
4. 試用期間=“無敵”ではない(ここ超重要)
薬局で多い誤解は「試用期間なら、合わなければ即終了できる」。でも実務では、試用期間中でも労働者の地位はあります。本採用拒否にも理由・手続が必要になります。
特に「能力不足」を理由にするなら、どこが不足か/どう指導したか/改善機会を与えたか、の記録が重要です。
最低限の3点セット:
- 評価項目を明文化(接遇、監査手順、時間厳守、報連相など)
- 面談記録を残す(週1〜隔週でもOK)
- 改善期限を切る(いつまでに、何をどうするか)
5. 労働条件の変更は「合意」が基本
採用時に決めた条件を入社直前・直後に変えたくなる場面があります(週5→週4、給与見直し、勤務地変更など)。
- 不利益変更は、原則として本人の合意が必要
- 口頭合意は危険。書面で残すのが安全
交渉の順番は、理由の説明→代替案提示→合意書作成、が揉めにくいです。
6. すぐ使えるチェックリスト(採用の最低限)
採用前
- 求人票と実際の条件が一致している
- 面接時の発言メモがある(特に給与・休日)
- 資格・免許の確認フローがある(薬剤師免許等)
内定時
- 内定通知書を出す
- 労働条件通知書を出す
- 試用期間の条件を明記する
- 取消条件(資格確認・健康診断など)を明記する(必要な場合)
入社後(試用期間)
- 評価項目がある
- 面談記録がある
- 指導と改善機会の記録がある
まとめ:採用トラブルは“書面と運用”で8割防げる
内定取消・試用期間・条件変更で揉める薬局の多くは、「書面が弱い」「記録がない」「合意があいまい」が原因です。採用は攻めの施策ですが、守りを固めると無駄な炎上コストが消えます。
