薬局M&A・事業譲渡の法務:譲る側が揉めやすいポイント10個

薬局のM&A(事業譲渡・株式譲渡)は、話がまとまるときは一気に進みます。ところが、譲る側(売り手)が「そんなはずじゃ…」となりやすいポイントが、実は決まっています。

この記事では、薬局を譲る側が揉めやすいポイントを10個に絞って、先回りで潰す視点をまとめます。

1. 価格より揉める:支払条件(分割・アーンアウト)

売買価格が高く見えても、分割払いや条件付き(業績連動)だと、実際の回収が不安定になります。

  • 支払時期(いつ振り込まれる?)
  • 分割の担保(保証・担保・相殺条項)
  • 条件付きの定義(売上・利益の算定方法)

2. 従業員の引継ぎ(雇用が最大の地雷)

事業譲渡では雇用が自動で移りません。従業員の同意・説明が必要になり、ここで崩れます。

  • 誰が説明するか
  • 条件が変わるか(賃金・シフト・役職)
  • 引継ぎ不調で退職が連鎖しないか

3. 賃貸借契約(店舗)の承継・名義変更

店舗賃貸借がネックで止まることがあります。

  • 賃貸人の承諾が必要か
  • 保証人・敷金・原状回復の扱い
  • 名義変更ができない場合の代替スキーム

4. 取引先契約(卸・IT・委託)の承継

卸・IT・在宅委託などの契約が、譲渡で解除・再契約になるケースがあります。コストが跳ね上がることも。

5. 行政・許認可・届出(薬局特有の論点)

薬局は許認可・届出が絡みます。スケジュールがズレると、引渡し日が崩れます。

  • 開設者の変更に伴う手続
  • 管理薬剤師の変更
  • 加算や運用の引継ぎ

6. 在庫・設備の評価(棚卸が争点化しやすい)

在庫評価(薬剤・衛生材料・一般品)、不良在庫、使用期限などで揉めます。棚卸の基準を決めておかないと、引渡し直前に荒れます。

7. 既存の債務・トラブル(未払い残業代、個情事故、クレーム)

譲渡前の問題が、引渡し後に発覚して表面化し、表明保証や補償条項で揉めます。

8. 競業避止(売り手がどこまで縛られるか)

「近くで薬局をやらない」等の条項が広すぎると、売り手の将来を縛ります。範囲・期間・地域は現実的かを確認。

9. 表明保証・補償(売り手の責任範囲)

買い手のひな型は、売り手に重い責任が乗っていることがあります。

  • 何を保証するのか
  • 責任の上限(キャップ)
  • 責任期間(いつまで請求される?)

10. 引渡し後の引継ぎ(サポートの範囲)

「引渡し後3か月は手伝ってください」等、口約束でズルズル残ると地獄です。範囲・時間・報酬を明確に。

まとめ:薬局M&Aは「人・店・許認可・契約」で止まる

薬局のM&Aは、価格交渉よりも「雇用」「賃貸借」「許認可」「承継契約」で止まります。譲る側は、責任範囲(表明保証・補償)と将来の自由(競業避止)も含め、先回りで設計するのが勝ち筋です。

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